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第732話
城崎の胸の中にいたら、だんだん眠くなってくる。
疲れも溜まっていたし、泣いたから余計に。
「眠いですか?」
「………ん。」
「運びます。」
このまま一緒に寝るのかなと思ったけど、城崎は真っ直ぐに俺の部屋へと連れて行った。
城崎のことだから、きっと俺のためなんだろうけど、ネガティブな俺は悪く考えてしまう。
もう俺と一緒に寝たいと思わなくなったのかな…とか。
「おやすみなさい、先輩。」
マットレスに横にされ、布団をかけられる。
立ちあがろうとする城崎の腕を引いた。
「寝るまでここにいて…?」
「………はい。」
城崎は少し返答に迷った末にそう言った。
即答じゃないんだ…。
今までの城崎なら、もっと強引にでも俺の近くにいたのに。
「城崎……」
「なんですか?」
「……怒ってる?」
答えを聞くのが怖いのに、知らない方が怖い。
城崎は少し黙った後に答えた。
「怒ってます。」
「……っ」
「でも、先輩は反省してるみたいだし、俺だってこれ以上喧嘩を長引かせたくない。」
「………うん。」
「今回だけは許します…。次同じようなことがあったら、俺何するかわからないですから覚悟してくださいね。」
…………よかったぁ。
ほっと息を吐くと、城崎は俺を見て優しい顔で笑った。
でも、最初に怒ってた原因は飲んでたことじゃなかった。
それに、飲んだ後何もなかったって…、一人で戻ったって思ってるのは俺だけってこと…?
あの夜、本当は何があったんだ?
蛇目に聞いたら教えてくれるのか?
でも、飲んだ次の日の朝だって、つい最近何かあったか聞いた時だって、あいつは何もなかったって…。
城崎は何を聞いたんだ?
「先輩、寝られそう?」
「………うん。」
「まだ何か気になる?」
「………ううん。」
城崎に聞くのはお門違いな気がする。
それに、もう一度思い出させて怒らせちゃったら嫌だし…。
「手…、繋いでいい?」
「いいですよ。」
城崎の手を握ると、安心してスッと眠りにつくことができた。
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