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第733話
翌日、目が覚めた時には城崎はそばに居なかった。
俺が一緒に寝ないって言ってるんだから、当たり前なんだけど。
リビングからいい匂いが漂ってきて、城崎が朝食を作ってくれているのがすぐに分かった。
「おはよう。」
「おはようございます。眠れました?」
「うん…。ありがとう。」
ぎこちなくとも、昨日よりは話せている。
朝ごはんを済ませ、出勤していつも通り働いた。
昼休憩になってすぐ、俺は涼真の元へ駆け寄った。
「涼真、今日は食堂行こ。」
「え?城崎は?」
「いいから。」
「えぇ…?」
涼真の腕をグイグイ引いて食堂へ連行する。
城崎と一緒にいたい気持ちもあるけど、昨日の今日でちょっと気まずいし…。
二人席を見つけて座ると、涼真はため息をついた。
「またなんかあった?」
「え…」
「分かりやすいんだよ。城崎と何かあったんだろ?」
さすが親友…。
昨日あったことを説明する。
涼真に話して、自分も頭の整理をした。
「それは綾人が悪くね?」
「………。」
「この職場で一番と言ってもいいほど城崎が敵視してる蛇目とサシで飲んで、しかも酔って記憶ないとか馬鹿だろ。」
「……はい。」
「それを許してくれるあいつの寛大さに甘えすぎ。」
「…返す言葉もございません。」
涼真にしっかりばっちり怒られた。
自分でも分かってる。
俺が悪いって…。
「そもそも、そんなにやらかしても許してくれた相手に、気まずいとか言って俺に逃げてるのヤバいから。」
「………」
「今すぐ謝って一緒に飯食いな。俺のことはいいから。」
「………一緒に来て。」
「俺が殺されてもいいのかよ?つーか、そんなことしたら余計に機嫌損ねるぞ。」
涼真に背中を押され、部署に戻る。
城崎の姿が見当たらなくてキョロキョロしていると、会議室から城崎が出てきた。
見つけたことが嬉しくて駆け寄ったはいいが、もしかしてまだ怒ってるかも…と足を止める。
「先輩?柳津さんと食べてたんじゃなかったの?」
「そ…うなんだけど…。やっぱり城崎と食べたいなって……。」
そう伝えると、城崎は優しく笑って了承してくれた。
空いてる会議室で、二人きりで昼食をとる。
「美味しい。」
「どうも。」
城崎の作ってくれたお弁当。
彩りも良くて、もちろん味も良い。
朝から時間かけてお弁当まで作ってくれて、こんなに尽くされているのに、俺は何も返せていない。
今までの俺って、どうしてたんだっけ。
どうすれば、城崎と釣り合う人間になれるの?
やっと隣にいる決心がついたのに、また揺らぎそうになってしまう。
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