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第737話
「美味しかった〜!さすが人気なだけありましたね。」
ランチを終え、少し買い物してから家に帰る。
美味しかった……と思う。
ぼーっとしてて、はっきりと味は覚えていないけど…。
リビングのソファに座ると、城崎は隣に座って俺の手を取り、指を絡めた。
「先輩……、どうして外で手繋いでくれたの…?」
「え…。あ、ごめん…。嫌だったか…?」
「まさか!逆ですよ、逆!!嬉しすぎたから聞いてるんです!だって、今まで先輩、外では結構遠慮してたじゃないですか!」
外……。
たしかに今までは、積極的に外で手を繋いだりしてなかった。
周りに知られたくなかったから。
バレて、城崎と離れるのが怖かったから。
「城崎はさ…」
「うん…?」
「周りに後ろ指を指されても、俺と一緒にいてくれる…?」
答えを聞くのが怖かった。
答えがNoなら、やっぱり繋がなければよかったと後悔してしまうから。
でも、城崎はそんな俺の不安なんか全部吹き飛ばした。
「もちろんですっ!」
「わっ…?!」
突然ぎゅぅっと抱きしめられる。
城崎は幸せそうに呟いた。
「俺、先輩が俺のそばにいてくれたら、それだけで幸せなんです。周りに何言われたって関係ありません。先輩がいれば、他の何を失っても怖くないんです…。」
「大袈裟……」
「大袈裟なんかじゃないですよ?俺の幸せ全部、先輩なしじゃ存在しないんですから。」
やっぱり大袈裟だろ…。
でも、城崎がこうして全力で愛をぶつけてくれると安心する。
抱きしめられた瞬間幸せがいっぱいで、安心して、心がふわふわする。
これが先生の言ってた幸せホルモンの効果…?
今まで当たり前に感じてた心のぽかぽかが、医学的にも言われているものだったなんてなぁ。
「先輩、今日は一段とスキンシップ多めですね。なんかいいことありました?」
「どうだろ?分かんない。」
いいことというか、幸せホルモンの話を聞いたから、城崎に触れたいとより一層思うようになっただけ。
で、触れたら城崎への"好き"がどんどん膨らんで、自然と笑顔になった。
城崎は最近見た中でも一番幸せそうに笑ってる。
城崎も幸せホルモン感じてくれてんのかな?
そうだったら嬉しい。
今日なら…、一緒に寝られるかな……?
「城崎…」
「ん?」
「今日、俺の隣で寝てくれない…?」
「えっ?!!」
城崎は一際大きな声を出した。
俺がびっくりして言葉を失うくらいに。
「ダメ…だったか…?」
「ダメなわけないでしょ?!!よろしくお願いします!!!」
痛いくらいに抱きしめられて、俺は城崎の腕の中で圧死しそうになった。
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