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第743話

家に着いて、城崎は先にリビングへ向かった。 「あ。先輩〜、郵便受け確認してて〜。」 「おー。」 ドアの裏にある郵便受けを開けると、俺宛の黒い封筒が入っていた。 何これ? 差出人の名前もないし…。 気になって開けてみると、俺は開けたことを後悔した。 「…………」 「先輩〜?手洗って早く来て〜。」 「あ、あぁ…。」 「なんかきてました?」 「ううん。何も。」 俺は中身を封筒に戻して、自分の部屋のゴミ箱にそれを捨てた。 封筒の中に入っていたのは数枚の写真。 裸の城崎と、知らない男の人が写っていた。 写ってるのは全員違う男…。 分かってる、昔の写真だって。 写真の中の城崎は今よりも明らかに若かったし…。 でもなんで? 郵便受けを俺に確認させたことと、この封筒が入っていたことは関係ある? まさか城崎が…? 違うよな…? 「先輩?気分悪い?」 「な、なんで…?」 「顔色悪いから。さっきまで普通だったのに。」 「そ…うかな…?……あ、焼き鳥美味そう。早く食べよ?」 「え、うん……。」 これ以上探られたくなくて、俺は城崎の焼いてくれた焼き鳥を頬張る。 ………気持ち悪い。 絶対美味いはずなのに、味も変に感じる。 「うっ……」 「先輩っ?!」 「ごめ…っ、ぅぷ……」 リビングから飛び出てトイレに駆け込む。 さっき飲み込んだもの全部吐き出した。 「先輩っ?どうしたの?いつから気分悪かったんですか?」 「大丈夫……」 トイレまで追いかけてきた城崎は、俺の背中を摩ってくれた。 違う。城崎はあんなことしない。 きっとたまたま嫌がらせとタイミングが重なっただけ…。 俺は城崎のこと信じるんだ…。 「全然大丈夫じゃないです。何か食べれますか?ゼリーとかもダメそう?」 「焼き鳥…」 「無理して食べなくていいですよ。」 「でもせっかく作ってくれたのに…」 「いつでも作ってあげます。今日は食べやすいものだけ。ね?」 城崎は優しい。 きっと手間も掛かるし、俺のこと思って作ってくれたのに…。 「ごめんな…。」 「謝らないで?体調悪いのは仕方ないですよ。元気な時にまた一緒に食べましょうよ。」 「うん…。」 「仕方ないから、今日の残りは職場の鳥にあげるかぁ。」 「……ふふっ(笑)鳥って、ちゅんちゅん?」 「正解です。よかった、先輩笑ってくれて。」 城崎の優しさに甘えて、今日はゼリーだけ食べて、こっそりと薬を飲んだ。 湯船に浸かると体の緊張が解け、ほんの少し不安が和らいだ。

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