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第747話

仕事が終わり、家に帰り、今日こそ城崎と眠りたかったのに、やっぱり俺の体はダメだった。 震えが止まらなくて、城崎は嫌な顔一つせず、俺が目を瞑るまでそばで寝かしつけてくれた。 でも眠りは浅くて、0時に目が覚めた。 眠剤を飲みたくて、水を汲みに行こうとリビングへ行くと、ごそごそと物音が聞こえて、俺は息を潜めた。 「………っ、……ふっ…」 「…!!」 荒い息と布の擦れる音。 時々漏れる城崎の声。 「………嫌。…嫌だ。」 誰かいるの? 城崎、嫌だよ。 俺だけがいい。 俺以外の誰かを抱かないで…。 「ふっ…うぅ…」 リビングから背を向けてトイレに駆け込み、便器に向かって思いっきり嘔吐した。 怖い。気持ち悪い。 「おぇっ…、ゲホッ…!うぅ……」 どんどん胃から上がってきて、消化しきれていないものを全て吐き出した。 苦しくて涙が止まらない。 吐き戻していると、トイレのドアがノックされる。 「先輩…?起きたの?」 「……っ!!」 「大丈夫?」 「…ぅっ、おえっ…」 「先輩っ?!入るよ??」 嗚咽をしたから排泄ではないと確信したのか、城崎がドアを開けて中に入ってきた。 涙と吐物でボロボロな俺を見て、悲しそうな表情をして俺を抱きしめる。 「どうしたの?なんでこんな…。昨日からろくにご飯食べてないじゃないですか…。」 「…ヒック……、うぅ…」 「なんでこんなに弱ってるんですか?どうして?俺が何かしちゃいましたか?」 俺の顔は汚いのに、城崎は袖で俺の涙を拭う。 ていうか、城崎一人……? 「城崎…っ、誰もいない……?」 「え?」 「さっきリビングに誰かいた…?」 「いないよ?俺一人だけ。俺たちの家だよ?俺と先輩しかいない。」 「……そっか。」 自分の思い違いだったと、ほんの少しだけ安心して、城崎に体重を預けた。 城崎は俺の肩を抱き寄せ、優しく尋ねる。 「誰かいると思ったの?」 「………ぅん。」 「俺だけだよ。大丈夫。大丈夫だから…。」 疲れた。苦しい。 食事も取れず、睡眠もほとんど取れていないからか、もう体力の限界だった。 「心配だから一緒に寝ていいですか?」 「………無理。」 「そっか…。部屋で寝るの?」 「……うん。」 「鍵は開けててね?閉めたらドア壊しちゃうかもしれないから…。」 顔を洗って、部屋の前まで見送られる。 ドアを潰されたら困るから、鍵は閉めずに扉を閉める。 薬ケースから抗不安剤と眠剤を何錠か口に放り込んで、唾液で飲み込んだ。 きっとこれで眠れるはず…。 俺は疲労と薬の効果で、気を失うように眠りについた。

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