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第748話

長い夢を見ていた気がする。 幸せな夢か、悲しい夢か、内容は覚えていない。 呼ばれている気がして、微かに目を開けた。 「先輩っ?!!」 「…………城…崎…?」 「先輩っ!!よかったぁ!!本当によかった……。」 夢? 城崎の言動の意図が分からず、漠然とそう思う。 俺を見て心底安心したような顔をする城崎を見つめた。 俺が起きただけで、そんなに驚くことか? 「……今何時…?」 「もう20時ですよ…。」 20時……。 20………? 「……………………え?えっ?!」 「はは。急に目が覚めた。」 俺が寝たのって何時だ?! そんな早くなかった気がする。 え??どういうこと?? 「何?どういうこと?今日何月何日??」 「6月21日火曜日です。」 火曜日の20時って…。 はっ?!! 俺は丸一日眠ってたってことか?! 「仕事は?!」 「今日は先輩はお休みしました。連絡もしたから大丈夫。」 最悪だ……。 社会人としても失格だし、城崎もそりゃ心配しただろうし、終わった……。 手で顔を覆っていると、城崎は俺の頭にキスを落とした。 「大好き…。愛してる…。」 「な、何だよ、急に…!」 「不安にさせてごめんなさい。あの手紙、日曜日に来てたの?あれ見て、体調悪くなっちゃったんですか…?」 「……!!!」 「俺には先輩だけだよ。先輩以外いない。」 驚いて城崎を見上げる。 何でバレたんだ? 城崎には見せたくなかった。 城崎が過去にたくさんセフレがいたのは知ってる。 もう過ぎたから仕方がないことだ。 そんな今更なことで、俺がメンタル崩したなんて知ったら、城崎また自分のこと……。 「あ…、あれが昔のだってわかってる…。分かってるから、言わなかった……。過去は変えられないし…、今の城崎は違う…から…。」 「うん。ごめんね。たくさん傷つけて、不安にしてごめんなさい。」 ほら。 城崎は謝ってばかりだ。 俺と付き合う前のことなんだから、仕方ないことなのに。 謝ることって、体力使うのに…。 城崎は俺を抱きしめて、真っ直ぐ目を見つめた。 「でも、不安なことあったら話してほしい。どうにもできなくても、俺に相談してほしい。」 抱きしめられて、安心する。 俺は城崎に"俺だけ"とそう言われて安心したのか? 身体の震えや、息苦しさは今はなかった。

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