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第751話
翌日、涼真にはめちゃくちゃ心配したと叱られ、謝ると「無事でよかった。」と抱きしめられた。
城崎はそれ見て怒ってたけど、今回だけはと許してくれた。
眠っている間、倉科さんや圭くんにもお世話になったと城崎に聞き、仕事終わりに菓子折りを持って行った。
色んな人に心配をかけてしまったのだと、自分の行動を今一度反省した。
土曜日になり、城崎と外出の支度をする。
一緒に心療内科を受診するからだ。
あの日から、毎晩寝る前に城崎が薬の数を数えている。
もう大丈夫って言っても、「ダメ。これは先生に与えられた俺の義務ですから!」と聞いてくれなかった。
ちゃんと決められた分だけ飲んでる。
また増えてしまったけど、1日3回。
城崎にもちゃんと確認されてるから、飲み忘れも飲み過ぎもない。
それに、あれから眠剤だって使ってない。
ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、また人間らしい生活を送ることができている。
靴を履いて、家を出る前に玄関で立ち止まる。
「どうしました?……!」
不思議そうに振り向く城崎の小指を握ると、城崎はすぐに気づいて俺を抱きしめた。
キスしたいな…。
強くそう思うようになったのは、ここ最近だ。
「先輩、大好き。」
「うん…」
毎日朝起きた時、仕事に行く前、帰ってきてからと、それから寝る前に、ハグする習慣ができつつあった。
それに、城崎が俺に触れてくれることも多いし、何度も俺への愛を伝えてくれるし…。
離れている時も何度か思ったけど、この数日間は城崎との距離がグッと近づいた気がして、それに伴ってなのか、キスしたい気持ちが強くなっていた。
狭いけど、俺の部屋で二人で寝て、朝は淹れたての珈琲の匂いで起きる。
俺の心は穏やかで、城崎もいつも以上に優しくて、こんなに甘やかされた生活してていいのかなって、逆に不安になってしまうくらいだ。
涼真にも花が飛んでるって言われるくらい幸せオーラ出してるっぽい。
これっていい傾向だよな…?
「先輩、行こっか。」
「…っ!うん!」
城崎と手を繋いで家を出る。
最近よく手を繋いでるから、同じマンションの人なら気づいている人もいると思う。
だけど、前よりは気にならなくなった。
マンションを出て、駅までのんびりと歩く。
もう季節は夏に向けて、汗ばむくらいには気温が高い。
でも、城崎と手を繋ぐのは全く苦ではなかった。
「心療内科の先生、いい人ですね。」
心療内科に向かう途中、城崎はそう言った。
「うん。すごく信用できる先生。」
「わかります。ちょっと怖かったですけどね…。」
「え?先生が?」
「ははは…。先輩も今日分かるかも。」
「え〜?」
あの優しい渡瀬先生が怖いわけない…よな…?
城崎の言ってることが、数十分後、身に染みて思い知らされることになるなんて、この時は思いもしなかった。
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