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第752話
「望月さん、分かりましたね?」
「はい……。」
「命に関わるんですからね。」
「はい……。」
「絶っっ対に、決められた量しか飲んではいけません。信用問題ですよ、これは。」
「すみませんでした……。」
オーバードーズ。
前に抗不安薬と眠剤を過剰摂取したことを、こっぴどく叱られた。
かれこれ10分は同じことを繰り返し言われてる。
誰にも怒られなかったのが不思議なくらい、先生めちゃくちゃ怒ってる。
笑顔で毒吐かれるの怖ぇ…。
「まぁお叱りはこれくらいにして…。」
「ふぅ…。」
「こら。望月さん。」
「すみませんでした。」
やっと説教が終わったと息を吐くと、先生はギロリと俺を睨んだ。
ピシッと背筋を伸ばすと、先生は「嘘です。もう楽にしていいですよ。」と笑っていった。
「最近はどうですか?」
「調子いいです。」
「城崎さんから見ていかがですか?」
「はい。俺から見ても、先輩元気になってきたと思います。毎日可愛い笑顔が見れて、俺は幸せです。」
「ちょっと…!何言ってんだよ?!」
「え〜?事実だけ述べてますよ?」
先生相手に惚気ると思ってなくて、俺は慌てて城崎の口を押さえる。
そんな俺たちのやりとりを見て、先生はくすくす笑っていた。
「身体の震えや過呼吸も止まってるみたいで良かったです。お薬減らしましょうか。」
「はい。大丈夫だと思います。」
「城崎さん、望月さんの体調と薬の管理はお願いしますね。」
「任せてください。」
薬はまた減量していくらしい。
城崎は俺のことを任されて嬉しそうだ。
良かった。面倒と思われてなくて…。
「望月さんは不安なことがあったらすぐに相談すること。城崎さんでもいいですし、もちろんこちらに受診してくださってもかまいません。くれぐれも一人で溜め込まないように。」
「…………」
「返事は?」
「はい…。」
渋々そう答えると、城崎と先生にダブルで睨まれる。
うぅ…、怖い……。
「先輩、ちゃんと話してくださいね?」
「……善処する。」
「ダメ!約束してくださいっ!」
そんなこと言われても…。
城崎のことを城崎には言いにくいしな…。
「まぁ無理強いは良くないですけど、望月さん、本当に抱えちゃダメですよ?」
「………」
「城崎さん、少しでも望月さんの様子がおかしかったらすぐに連絡してくださいね。」
「はい。」
先生は俺の頑固さを分かっているからか、俺に約束させることを諦め、城崎に任せていた。
「じゃあ今日の診察は以上になります。」
「あ。待ってください、先生。少しだけ二人で話したいです。」
「いいですよ。では、城崎さんは先に待合でお待ち頂けますか?」
「はい…。」
城崎は渋々診察室を後にし、俺と先生の二人きりになった。
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