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第753話
「どうされました?」
「この度はご迷惑おかけしてすみませんでした。それと、先生が先週言ってたこと、お礼言いたくて…。」
「…?」
「ハグのこと、教えてくださったでしょ?好きな人とハグすると、幸せホルモンが出るって。」
「あぁ、お教えしましたね。」
先生は思い出したようにそう答えた。
「俺、あの言葉にすごく救われたんです。あれから本当、抱きしめてもらうたびに気持ちが楽になって…。」
「それはよかった。」
「幸せホルモンが目に見えるくらい、自分から分泌されてるんだなって分かるんです。」
「それだけ城崎さんが望月さんのことを愛してる証拠ですね。幸せホルモンは、好きな人同士だからこそ分泌されるんですよ。」
「へへ…。そうだといいな…。」
先生のおかげで、前よりも随分城崎に素直に甘えられるようになったと思う。
多分先生に教えてもらわなくて、こんなにいっぱい抱きしめてもらうことがなかったら、俺はこんなにも満たされた気持ちにはなってなかっただろうから。
「あ…、あと…。」
「はい。」
「恋人…、男だなんてびっくりされましたよね…。すみません、言っておけばよかったのに…。」
知らぬ間に城崎が先生に会っていたけど、先生きっと信じられなかっただろうな。
城崎がなんて名乗ったか知らないけど…。
「城崎さんが望月さんの名前を出された時、すぐ分かりましたよ。」
「え?」
「あんなに心配そうに来られるなんて、家族以外だと恋人くらいでしょう?それに、望月さんのお話を聞いてたとき、なんとなく男性かなと思っていたんです。」
「嘘?!」
俺、そんな相手を男だって想起させるような話したっけ??
無意識に出てたのかな?
うわ、恥ずかし…。
バレてたんだ……。
「素敵なカップルですね。応援してますよ。」
「そんな…っ!あ、ありがとうございます…。」
「さて、そろそろ望月さんも行ってくださいね。あまり遅いと、彼に怒られます。」
「先生にまで嫉妬しないですよ、さすがに。」
「どうでしょうね?彼、かなり独占欲強そうですけど?」
先生に言われて待合に戻ると、城崎はムスッとした顔で座っていた。
俺を見た瞬間、大股でこっちに寄ってきて、ぎゅぅっと抱きしめてきた。
「遅い…!」
「ご、ごめん…。」
「何の話?治療以外の話だったら怒る。」
怒るって…。
子どもかよ、もう…。
嫉妬してるのが可愛くて思わず笑ってしまうと、城崎はプクッと頬を膨らませた。
「大した話してないよ?」
「じゃあ俺いても良かったじゃないですか!」
「恥ずかしいもん、城崎いたら。」
「何その可愛い理由…。ずるいです…。」
拗ねる城崎を宥めてクリニックを後にする。
会計は俺を待ってる間に城崎が済ませていたらしい。
治療費まで払わせる理由はないと言ったけど、受け取ってくれる様子は全くなかったから、今月は多めに共有口座にお金入れとこっと。
帰りは外でランチを済ませてから家に帰った。
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