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第756話

心療内科の定期受診が終わり、薬は1日1回に減量、受診日の間隔も空けることになった。 次の受診は二週間先。 発作なども起きず、経過は順調ですと説明を受けた。 「じゃあ俺は実家に帰るから。城崎は納涼会楽しんでくるんだぞ。」 「はーい。帰り、駅までお迎え行きますね。」 「着いたら連絡はするけど、迎えは大丈夫。」 「行きますって。」 「気持ちだけで十分だよ。」 暗くなるまでには解散するけど、車運転したり、家に送る順番もあるし…。 俺もそんな早く帰ってこられるわけじゃないから、城崎か俺かどちらが早く帰宅するかはわからないけど…。 「じゃあ、また夜に。」 「はい…。気をつけて行ってきてくださいね。」 城崎と別れ、実家の方面に向かう電車に乗る。 今日こそは…。 電車とバスを乗り継いで、また更に暑くなった田舎に到着。 山が近くて風は涼しいけど、やっぱり暑いな…。 「ただいま。」 「おかえりなさい。お昼はお素麺準備してるわよ。」 「ありがとう。」 母さんに呼ばれ、氷で冷やした素麺を啜った。 扇風機や風鈴の音、風が吹くとサーっと鳴る木々の音や、五月蝿い蝉の声。 東京で暮らし始めて、夏は冷房をつけて部屋で過ごすことが多いから、こっちに帰ってくると新鮮な気分になる。 なんだか昔を思い出すな…。 縁側でぼーっと座っていると、母さんが隣に座った。 「綾人…、相手の方のこと、聞かせてくれる…?」 「え?」 「どんな方なの?ちゃんと聞いておきたいと思って…。」 吃驚した。 まさか母さんから城崎のことを聞いてくるなんて。 「………会社の後輩。6つ下の、すげー仕事できるやつ。」 「へぇ。てことは、2年目か。綾人にそう言わせるってことは、本当にできるんだな。」 父さんも居間で聞いてて、俺の言葉にそう返した。 「うん。多分部署内で一番仕事早いし、ミスも少なくて上からも気に入られてる。格好良くて、料理もできて、すごく優しい…。」 「付き合うことになったのは?どっちからなんだ?」 「キッカケは向こうから。すげー熱烈な告白されてさ。最初はびっくりしたし、俺は女の子が好きって断ったんだけど、あいつ諦めなかったんだ。」 懐かしい。 告白されて驚いた。 自分が男を恋愛的な意味で好きになるなんて絶対にありえないと思ってた。 悪いけど、想いには応えられないって、あのときはそう思ってたんだよな。 「本当に俺のこと一途に愛してくれてさ…。いつの間にか好きになってた。」 好きって言葉じゃ足りない。 大好き、愛してる。 そんなありきたりな言葉じゃ言い表せない。 俺の相手はあいつしかいないとさえ思うんだ。 「…ふっ。息子に惚気話されるとは(笑)」 「っ?!」 どんな人かと聞かれて、思わずベラベラと話してしまった。 思わず口を塞いで父さんを見ると、穏やかな表情をしていた。

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