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第765話

帰り、俺はタイムカードを切って電車に乗った。 危ない道を通り、辿り着いたのはAqua。 中には入らず、店のドアが見える場所で立ち止まった。 何故ここに来たかというと、那瑠くんと会うためだ。 城崎と生きていく覚悟を決めた。 だから二度と城崎に近づかないでほしい。 それを伝えるために。 こんなこと城崎に言ったら絶対会うなって反対されるし、麗子ママに見つかっても城崎にチクられる。 だからこんなところで待ってるけど…。 来ないよなぁ……。 「帰るかぁ…。」 18時半を過ぎ、今日のところは諦める。 城崎に19時には帰るって約束しちゃったし。 過ぎたら探しに来そうだし…。 「ただいま。」 「おかえりなさいっ!先輩、今から探しにいくところでしたよ!!」 帰った瞬間、玄関で城崎と出会った。 靴を履いて、本当に探しにいく寸前だったらしい。 「ごめん。遅くなった。」 「ピッタリ19時。連絡の一つくらいくれたっていいのに。」 「ごめんってば。」 「今日は豚の生姜焼き。残さず全部食べてくださいね?」 「うん。いつもありがと。」 リビングから漂う美味しそうな匂いの正体。 本当、いつも美味い飯作ってくれて、感謝感激雨あられって感じだ。 「あと、お風呂の後は覚悟しててくださいね。」 「…………手洗ってくる。」 「あっ!先輩逃げないでくださいっ!!」 昼間のこともちゃんと覚えていた城崎から逃げるように洗面所へ向かった。 城崎ってば、何する気だ? 最近の様子を見るに、俺にキスやセックスを強要するわけでもないし、だからと言って前みたいに全部我慢してるわけではなさそうだし…。 リビングに向かうと、お茶碗いっぱいの白米に味噌汁、メインの豚の生姜焼きと付け合わせのほうれん草と人参。 男飯。それでいて、ちゃんと栄養も考えられてる。 「美味そう…。」 「夏なんですから。ちゃんと疲労回復ですよ。」 「はーい。」 用意されたもの全部食べ終え、いつも通り風呂に入り、リビングで城崎を待った。 俺の後に風呂から上がった城崎は、上裸のままリビングに戻ってくる。 「な、なんで裸なんだよ…!」 「ダメですか?そろそろ俺の裸見慣れてよ…。恋人でしょ?」 「引っ付くな!」 裸のまま抱きしめようとしてくる城崎から全力で距離をとる。 ダメだ。心臓がもたない…っ! 「ベッド行こ…?」 「ふ、服着ないと行かない!!」 「………わかった。」 城崎はしょんぼりした顔でスウェットを着て、俺の手を引っ張って寝室に向かった。

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