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第773話
また嫌な夢を見た。
城崎が那瑠くんと一緒にいて、俺はただそれを見ていることしかできない夢。
起きたら俺は泣いていて、城崎に抱きしめられているのにひどく淋しく感じた。
「………先輩、おはよ…。」
「おはよ…」
俺が動いてしまったからか、城崎も目を覚ました。
俺は泣いていたことがバレないように涙を拭く。
城崎は気づいてないようだったけど、優しく俺を抱き寄せた。
「まだ5時ですよ?二度寝する?」
「……うん。」
「朝何食べたいですか?特別に好きなの作ってあげます。」
城崎は優しくそう言った。
昨日心配させたから、気を遣ってくれてるのかもしれない。
「なんでもいいよ。簡単に作れるものでいいから、城崎ももう少し寝な。」
「優しいなぁ。我儘言っていいのに。」
「いい…。そばにいて…。」
今は少しでも隣に居たくて、小さな声でそう言うと、城崎は優しく抱きしめてくれた。
温かくて気持ちいい…。
6時半までうとうとして、7時前には布団から出て仕事に行く準備をした。
朝食を終えて着替えていると、城崎がミネラルウォーターと何かを手に持ってそばに来た。
「先輩、朝の分の薬飲みますか?」
「え……?」
城崎に手渡された抗不安薬を見て、ドキッとする。
昨日全部飲んでしまって、それで城崎に無理矢理吐き出させられて…。
なんであるんだろう…?
「今なんで?って思ってるでしょ。もらってきたんです。これ飲んだ方が気持ちが楽でしょ?」
「うん……。」
「今日も頑張りましょうね。」
ぎゅっと抱きしめられて、いつもなら安心するはずなのに、なんだかソワソワした。
なんで?
城崎のこと好きなのに…。
好きな人とハグしたら、幸せな気持ちになれるって…。
「城崎……」
「なんですか?」
「俺のこと……、好き……?」
聞いたはいいものの、答えを聞くのが怖かった。
だけど城崎は即答で返してくれる。
「大好きです。愛してる。……言葉って難しいですね。こんな言葉じゃ足りないくらいなのに…。」
「うん…。俺も…好き……。」
「嬉しい。今日も頑張れそうです。」
「ん…。」
好きだと言い合って、こんなにも力強く抱きしめられてるのに、やっぱりいつもと違う。
なんだか気持ちがはっきりとしないまま出勤した。
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