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第777話
うわ…、すごい…。
蛇目の家の中はなんというか、無駄なものがない。
部屋は白で統一されていて、何だか生活感がなくてソワソワしてしまうような、そんな感じ…。
「びっくりしたでしょう?」
「おぉ…。なんか落ち着かない…。」
「私はこれが落ち着くんです。主任の感想が一般的だと思いますけどね。どうぞ、座ってください。」
スタイリッシュなデザインの椅子に腰掛ける。
一見座りにくそうに見えたけど、腰掛けてみると座り心地は悪くない。
インテリアって、こんなに個性が出るんだな…。
「主任、どうぞ。ミルクティーです。」
「紅茶好きなのか?」
「えぇ。主任が好きそうなお茶菓子も用意してますよ。よかったら。」
「ありがと。」
あまり食欲はないけど、せっかく用意してもらったし手をつけないわけにもいかない。
ミルクティーに合わせて出してくれたスコーンを口にする。
うん。美味しい。
「主任。早速ですが、お話聞いてもいいですか?」
「うん…。実は……」
俺は蛇目に話した。
1年記念日からの出来事を、ところどころ内容は伏せながら。
途中で嗚咽してなかなか話せなくて、でも蛇目は急かすことなく俺が話し終えるのを待ってくれていた。
「お辛かったでしょうね…。」
「…………」
「城崎くんの元セックスフレンドの彼は、きっとプライドが高いんでしょうね。主任に城崎くんを渡したくなくて、嘘をついたんだと思いますよ。」
「やっぱり…嘘かな……?」
「はい。少なくとも私はそう思いますよ。でも、目の前でキスっていうのはしんどいですよね…。信頼できなくなってしまうのも、無理はないと思います。」
蛇目に話して、少し気持ちが楽になった。
俺はこうして同情されたかっただけなのか…?
俺の気持ちを誰かに分かって欲しかっただけ?
「信頼できないわけじゃないんだ…。ただ、怖くて…。」
「はい。」
「あの子が城崎に迫ったら、俺は自信がなくて城崎のこと諦めちゃうんじゃないかって…。離したくないのに、いざ目の前にすると怖くなる…。」
「主任はもっと自信を持っていいと思いますけどね。私なら、主任が自信を持って堂々とできるように行動に示します。」
「え……?」
私なら……?
何で急に例え話が始まるんだよ?
「主任、好きですよ。」
「は…?」
何言ってんだ?こいつ……。
あれ……?
なんか急に…眠気が……。
「私なら主任を幸せにできます。」
「蛇目…、何言って………」
プツン……。
強烈な眠気に襲われて、俺の記憶はそこでパッタリと途切れた。
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