778 / 1069
第778話
目を開けると、見知らぬ天井。
ふかふかのマットレスに、いつもより肌触りの良い掛け布団。
俺は服を着てなくて…。
……………え?
ガバッと上体を起こす。
は…?え……?
真っ白な部屋にダブルベッド。
服は乱雑に床に脱ぎ捨てられていて、俺の隣には……。
「蛇目……?」
眼鏡をかけていないが、高い鼻筋に長い睫毛、この甘いマスクは間違いなく蛇目だ。
布団を捲りたくない。
蛇目も裸だったら、これって……。
「……っ!」
尻の穴に違和感があった。
サッと血の気が引く。
まさか……。いや、そんなわけ……。
恐る恐るお尻に手を当てると、ドロッとした何かが溢れ出た。
手のひらには白濁が付いていて、それは間違いなく俺の尻から出てきたものだった。
「……ん、主任…?」
「…っ!」
「おはようございます…。早起きですね。」
蛇目が起きた。
俺を見て微笑む。
嫌だ…。違う……。
「主任、とっても可愛かったです。まさかハイジニーナとは思いませんでしたけど。」
「は…?」
「下の毛ですよ。ツルツルでびっくりしました。いつもお手洗いは個室入られてるので、まさかとは思ったんですけど。」
嘘…。
見られたのか?
どんどん体温が下がっていくような気がした。
全身から変な汗が噴き出てくる。
「なぁ、待って…。頭が追いついてない…。」
「覚えてないんですか?私たち、あんなに求め合ったのに。」
「っ!!」
蛇目の言葉で確信してしまった。
俺は城崎以外の男に抱かれてしまったということを。
「あ、主任!」
散らばった服をかき集めて、表か裏かも確認しないまま身に纏って急いで家を飛び出した。
空にはまだ太陽が昇りきっていない。
朝だ…。
本当に蛇目と一夜を共にしてしまったんだ…。
スマホの画面に城崎からの着信が表示される。
しばらくすると着信が切れて、留守番電話の文字が表示される。
城崎だけじゃなくて、涼真からも。
何件も着信とメッセージが入っていた。
無理だ…。
もう、戻れない……。
スマホの電源を切って、鞄の奥底にしまう。
日曜の早朝。
誰もいないホームで電車を待ち、やっときた電車に乗り込んで座席に座る。
城崎に合わせる顔がない…。
絶望とも言える今の状況に、俺は何も考えられなくなって、終点に着くまでぼーっと一点を見つめていた。
ともだちにシェアしよう!