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第780話

眠れない夜が終わった。 ずっと息が苦しくて、結局一睡もできなかった。 朝陽が部屋に差し込むけど、頭はぼーっとして働かない。 今日…、月曜日か…。 今自分がどこにいるかもわからないし、仕事には行けない。 休むにしても電話はしないと…。 「すみません…。公衆電話ってありますか?」 「はい。あちらにございますよ。」 スタッフに聞いて、公衆電話から会社に連絡する。 朝早いけど、誰かしらいるだろ…。 『はい。Sコーポレーション営業部です。』 「あ……。久米さんですか?望月です。」 『え、望月くん?どうしたの?』 ハキハキとした明るい声。 久米さんの声を聞くと、少しだけ元気を分けてもらえた気がした。 「今日体調不良で仕事行けなさそうで…。部長に伝えてくれませんか?」 『えーっ!大丈夫なの?食事は取れてる?』 「いや……。正直食欲なくて食べてません…。」 『もう!もっと悪くなっちゃうよ?』 「はは……。ごめんなさい、ご迷惑おかけして。」 『最近の望月くん、本当心配になるくらい体調崩すんだからぁ…。あ、もう少し待ってくれたら城崎くん帰ってくると思うんだけど…』 城崎…。 名前を聞いてドキッとした。 「変わらなくていいです。その…、みんなに申し訳ないって伝えておいてください。」 『そっかぁ。了解。ゆっくり休んでね!』 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」 電話を切って安堵の息を吐く。 よかった…。 城崎もう会社に来てたんだ…。 タイミングが悪かったら、電話越しに鉢合わせるところだった。 電話を終えて部屋に戻る。 そろそろ出ないと…。 でも、これからどうする? 帰っても、行くところないし…。 財布の中には数千円。 もう一泊すると、帰りの交通費は確実に足りなくなるだろう。 でも、どうしても帰りたくない…。 これが現実逃避ってやつなのか。 「すみません。追加でもう一泊って…。」 「承知致しました。ベッドメイキングはどういたしましょう?」 「そのままでいいです。」 「かしこまりました。」 フロントで手続きをして、部屋に戻る。 泊まってしまった…。 明日からどうしよう…。 迷惑かけるけど、涼真に迎えに来てもらう? もし、涼真が城崎も連れてきたら…? 俺は城崎になんて言えばいい? なんて答えればいい? 俺の言葉なんて、全部嘘に聞こえてしまうんじゃないか? 城崎はもう俺のこと、嫌いになってしまうんじゃないか? 考えれば考えるほど、怖くて怖くて仕方なかった。 スマホも開かず、ただジッと部屋から空を見つめていた。 ずっと不安で、ずっと胸の中がモヤモヤしてて、突然吐き気や過呼吸に襲われたりしながら、長い一日が終わった。 夜には体力も限界で、気を失うように眠っては、悪夢や吐き気で目が覚めるのを繰り返していた。

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