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第781話
心だけでなく身体も辛くなってきた。
連日の寝不足や過呼吸、嘔吐に加えて、食事も喉を通らずほとんど何も食べていない。
今日も仕事は無理…かなぁ…。
つーか、自分が今どこにいるか分かってねぇし…。
「すみません、望月です…。」
『望月か。体調はどうだ?』
公衆電話から会社にかけると、部長が電話に出た。
さっきまで気持ち悪くてトイレに篭っていたから、電話するのが遅くなった。
もし城崎が出たらどうしようと思ったけど、部長でよかった…。
「すみません…。まだ調子悪くて…、お休み頂いてもよろしいでしょうか…。」
『5月頭から調子悪いなぁ。大丈夫か?病院にはかかってるのか?』
「あ〜…、はい。一応…。」
部長はきっと内科とか、そっちが悪いんだと思ってると思う。
実際通ってるのは心療内科。
心の病気って、人によっては精神論だったりするから、言いづらいんだよな……。
『ならいいんだが。診断書とかもらえるならもらってきなさい。あと、今週はもうゆっくり休め。』
「いや、でも…」
『仕事中に倒れられたら困るからな。体調万全にして出勤しなさい。調子がいいなら出勤してくれる分には助かるが。』
「……わかりました。ご迷惑おかけします。」
『おう。ゆっくり休めよ。』
「ありがとうございます。失礼します。」
電話を切って、近くにあったソファに座った。
城崎に心配かけて、会社にも迷惑かけて、本当何やってるんだ、俺…。
おまけに浮気してしまったなんて、クズにも程がある。
これからどうすればいいんだろうか。
きっと城崎には振られて、だから新しい家を探さなくちゃいけなくて…。
こんなにも城崎に依存してしまっている俺が、今更城崎なしに過ごしていけるんだろうか。
これからも同じ職場で顔を合わせることに耐えられるのだろうか。
こんなによくしてくれてる職場も、俺が立ち去るべきなのかな…。
「はぁ……。」
「お客様、チェックアウトの時間が近づいておりますので、お部屋の荷物の整理をお願いしてもよろしいでしょうか。」
「あ…、すみません…。」
フロントマンに声をかけられ、部屋に戻る。
財布を間違えなければ、お金も下ろせてもうしばらくここに滞在できたんだけど…。
帰りたくないな…。
振られるの分かってて家に戻るとか…無理……。
部屋の整理はすぐに終わった。
ほとんど荷物なんてないし、何なら着替えすらない。
何日この服着てんだよ…。
夏だから汗もかくし、脂汗もすげーかいたし、若干異臭を放っているような…。
人に会える状態じゃない。
残金的にも、行けるところまで電車に乗って、あとは徒歩か…?
でもこのメンタルで城崎に振られるのは一番キツいし、野宿するのが正解なのかもしれない。
名も知らないこの町に着いて一番初めに訪れた公園に、無意識にたどり着いていた。
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