781 / 1069

第781話

心だけでなく身体も辛くなってきた。 連日の寝不足や過呼吸、嘔吐に加えて、食事も喉を通らずほとんど何も食べていない。 今日も仕事は無理…かなぁ…。 つーか、自分が今どこにいるか分かってねぇし…。 「すみません、望月です…。」 『望月か。体調はどうだ?』 公衆電話から会社にかけると、部長が電話に出た。 さっきまで気持ち悪くてトイレに篭っていたから、電話するのが遅くなった。 もし城崎が出たらどうしようと思ったけど、部長でよかった…。 「すみません…。まだ調子悪くて…、お休み頂いてもよろしいでしょうか…。」 『5月頭から調子悪いなぁ。大丈夫か?病院にはかかってるのか?』 「あ〜…、はい。一応…。」 部長はきっと内科とか、そっちが悪いんだと思ってると思う。 実際通ってるのは心療内科。 心の病気って、人によっては精神論だったりするから、言いづらいんだよな……。 『ならいいんだが。診断書とかもらえるならもらってきなさい。あと、今週はもうゆっくり休め。』 「いや、でも…」 『仕事中に倒れられたら困るからな。体調万全にして出勤しなさい。調子がいいなら出勤してくれる分には助かるが。』 「……わかりました。ご迷惑おかけします。」 『おう。ゆっくり休めよ。』 「ありがとうございます。失礼します。」 電話を切って、近くにあったソファに座った。 城崎に心配かけて、会社にも迷惑かけて、本当何やってるんだ、俺…。 おまけに浮気してしまったなんて、クズにも程がある。 これからどうすればいいんだろうか。 きっと城崎には振られて、だから新しい家を探さなくちゃいけなくて…。 こんなにも城崎に依存してしまっている俺が、今更城崎なしに過ごしていけるんだろうか。 これからも同じ職場で顔を合わせることに耐えられるのだろうか。 こんなによくしてくれてる職場も、俺が立ち去るべきなのかな…。 「はぁ……。」 「お客様、チェックアウトの時間が近づいておりますので、お部屋の荷物の整理をお願いしてもよろしいでしょうか。」 「あ…、すみません…。」 フロントマンに声をかけられ、部屋に戻る。 財布を間違えなければ、お金も下ろせてもうしばらくここに滞在できたんだけど…。 帰りたくないな…。 振られるの分かってて家に戻るとか…無理……。 部屋の整理はすぐに終わった。 ほとんど荷物なんてないし、何なら着替えすらない。 何日この服着てんだよ…。 夏だから汗もかくし、脂汗もすげーかいたし、若干異臭を放っているような…。 人に会える状態じゃない。 残金的にも、行けるところまで電車に乗って、あとは徒歩か…? でもこのメンタルで城崎に振られるのは一番キツいし、野宿するのが正解なのかもしれない。 名も知らないこの町に着いて一番初めに訪れた公園に、無意識にたどり着いていた。

ともだちにシェアしよう!