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第789話
「先輩、おかえりなさい。」
「た…、ただいま…。」
玄関に入ってすぐ抱きしめられる。
頭のてっぺんにたくさんキスを落とされて、ブワッと体温が上がった。
「じゃあ車返してくるから、先に寝ててくださいね。」
城崎はすぐに行ってしまった。
家…、帰ってきたんだな…。
洗面所に行くと、洗濯機の中にまだ洗われていない洗濯物が乱雑に詰め込まれていた。
キッチンには俺が出て行った日の昼ごはんに使ったお皿が、乾かしたまま残っていた。
まるであの日からこの家で過ごしていないような、そんな感じ…。
城崎の部屋から適当に服を取って、それと一緒に布団に潜る。
好きな人の匂いって、なんでこんなに落ち着くんだろう…?
熱で体力も奪われて、気を抜くとすぐに眠りそうになる。
先に寝ててって言ってたし…。
寝てもいいのかな…?
城崎の服を抱きしめて眠る。
目が覚めたときには、城崎が俺を抱きしめて隣で眠っていた。
いつ帰ってきたんだろう?
俺はどれくらい寝てたのかな?
時計を見ると、12時過ぎだった。
「あれ…。先輩、起きたの…?」
「城崎…」
「お粥食べますか?材料買ってきたので、いつでも作れますよ。……ふぁ。」
城崎は眠そうに欠伸する。
あんなにクマ作ってたんだもんな…。
城崎も寝不足なんだ…。
「もうちょっと寝る…。」
「ん、そっか。じゃあ俺も寝る。」
「うん…。」
「夜は食べさせますからね。」
有無を言わせぬ圧。
首を縦に振ると、城崎は「よし。」と俺の髪を撫でて、また俺を抱きしめて眠りについた。
俺はドキドキで寝るどころじゃないんだけど…。
でも、城崎が寝た今なら甘えられるかも…。
城崎の胸に顔を埋め、大きく深呼吸する。
落ち着く……。
息の仕方を思い出したように、呼吸が楽になる。
思い返せば、あの日から過呼吸だったり、逆に呼吸が浅かったり、意識して息を吸えていなかった。
「大好き…」
鎖骨のあたりにキスする。
ジュッと吸い付くと、ほんのり紅く色付く。
嬉しくて何度もキスマークの上からキスをした。
「なに可愛いことしてるんですか。」
「わっ?!」
寝てると思っていた城崎に突然抱きしめられ、身動きが取れなくなる。
苦しい…。
でも、嬉しい。
「いつから起きてたんだよ?」
「俺の匂い嗅いでたとき…?」
「初めから狸寝入りじゃねぇか。」
「先輩、もっと付けて?」
城崎は首元を曝け出して、指で示した。
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