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第790話

うぅ……。 恥ずかしい……。 「……これでいい?」 「だーめ。こっちにも付けて?」 次で4つ目。 言われるがまま、俺は城崎の肌に吸い付いて痕を残す。 夏なのにこんなところに付けて、本当に大丈夫なのかな…。 職場でめちゃくちゃイジられそう…。 城崎の喉仏の隣に吸い付く。 何度か付けてたら慣れてきて、一発で綺麗に付いた。 「先輩。」 「ん、何…?まだ付ける?」 「そうじゃなくて…。」 「うん?」 甘えタイムだと思ってたら、急に城崎の顔が真剣になった。 俺の手を掴んで引き寄せる。 「……先輩さ、先週の木曜日、那瑠と会ってたでしょ。」 「えっ……。」 なんでバレた? 誰にも言ってない。 なのにどうしてそれを城崎が知ってるんだよ。 「何言われたんですか。」 「えっと……」 「答えて。」 逃げるのは許さない。 城崎の目がそう言っていた。 「………この家で…、城崎と那瑠さんが…セックスしたって…。」 「は?」 言いたくない言葉を言った。 城崎は怪訝な顔をする。 「そんなことしてない。」 「俺だってわかってる!城崎がそんなことしないって…。でも、どうしても不安なんだ…。」 何度も自分に言い聞かせた。 たくさん与えられる城崎の愛を受け止めておいて、城崎が浮気するとは思えなかった。 でも、どうしてもモヤモヤした。 あの日、那瑠くんが裸で家から出てきたのは紛れもない事実で、それがずっと引っかかっていたから。 お互い黙って、重い空気になる。 沈黙を破ったのは城崎だった。 「分かった。じゃあ明日、先輩の体調がよかったら那瑠に会おう。」 「え…」 「先輩が一人で会うから、あいつ嘘吐きまくってんだろ。だから俺も会う。」 那瑠くんに会うのは怖い。 不可抗力で震えてしまう体を、城崎が抱きしめて安心させてくれる。 城崎がいたら…、大丈夫なのかな…。 ちゃんと言いたいこと言えるかな…。 「でも、城崎は仕事が…」 「あー、明日まで休みなんで。」 「……?」 「それは気にしないでください。てか、他に隠し事ない?不安に思ってるのはそのことだけ?」 「……うん。」 俺自身の気持ちの整理はついた。 俺の周りのことは解決したし、モヤモヤしてるのは本当にあと那瑠くんのことだけ…。 「城崎……、俺のこと、好き…?」 「大好き。愛してるよ、先輩。」 さっきのお返しだと言わんばかりに、首筋にくっきり大きなキスマークを付けられた。

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