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第792話

電話を切って、城崎はため息をついた。 「誰に電話…?」 「あぁ。麗子ママですよ。あいつと直接連絡取りたくないから、麗子ママ介して連絡してるんです。」 「そうなんだ…。」 少しだけホッとした。 連絡先知ってたら、なんか嫌だったから…。 「話すところ、Aquaでもいい?外の方がいいかとも思ったけど、暑いとしんどくなっちゃうかもだし。Aquaなら、何かあったら麗子ママ助けてくれるだろうし。」 「うん、いいよ。」 了承したものの、Aquaで城崎と那瑠くんが並んでるの見て俺は大丈夫かな…。 トラウマ蘇ったりとか……。 Aquaの前に着いて、足が止まる。 お腹痛くなってきた…。 「先輩、大丈夫?」 「ちょっと腹痛い…かも…。」 「えっ?!」 城崎は心配そうに俺のお腹を摩る。 緊張とかストレスって、こんなに体に出るんだな…。 今回改めて分かったかも…。 「ごめん。ありがと。もう大丈夫。」 「本当?」 「うん。入ろ。」 ウジウジしてても埒が明かない。 一歩踏み出して扉を開けると、城崎は俺の手をぎゅっと握って隣を歩いた。 「あら!!綾ちゃん!!!」 「お久しぶりです…。この前はどうもありがとうございました。」 「怒っちゃってごめんね?でもこの前より少し元気そうで良かったわぁ。夏くんのおかげかしらぁ?」 店内に入ると、麗子ママが駆け寄ってきた。 城崎が優しい表情で俺の顔を見つめ、頭を撫でる。 「そうだといいけど。麗子ママ、無理言ってごめん。」 「いいわよ。ほら、好きなところ座って♡好きなの言ってくれたら作るわよ♡」 「はは。お酒以外で適当に何かお願い。」 城崎は二人掛けのソファに腰を下ろし、俺を隣に座らせた。 麗子ママは綺麗な色の飲み物を二人分テーブルに置く。 「お酒じゃないよね?」 「いやね、ノンアルよ。美味しいんだから。」 「じゃあいただきます。」 城崎が飲んだあと、許可をもらって俺も飲む。 どうやら飲むまで酒だと疑ってたらしい。 パイナップルの味がして美味しい。 「やっぱり二人が並んでるの見ると幸せになるわね〜♡」 「分かる?」 「二人とも表情が全然違うもの!夏くんは幸せで堪んないって顔してるし、綾ちゃんは可愛さが倍以上になるのよね〜。」 「先輩元々可愛いから、これ以上可愛く見えてるなら困るんだけど。」 「初めて連れて来てくれたときとは別人みたいだもの!それだけ今は夏くんが好きってことよね〜♡私も愛されたいわぁ♡」 ワイワイと盛り上がっていたとき、店の扉が開いた。 まだ開店時間前。 つまり今入ってきたのは……。 「那瑠ちゃん、いらっしゃい。」 入り口近くに立っていたのは、那瑠くんだった。

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