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第796話
麗子ママがお酒を煽って、悪酔いして、城崎と二人で介抱して…。
お店はもちろん臨時休業。
麗子ママを無理矢理吐かせ、Aquaに併設されてる住居スペースに転がして、バーのカウンター席に着いて一息つく。
「はー…。俺たちのお祝いパーティーなのに、なんで主役が介抱しなきゃなんねーんだよ…。」
「でもさ、城崎。」
「ん?」
「俺たちが付き合ってること、喜んでくれる人がいるって嬉しいね。」
麗子ママは俺と城崎のことを応援してくれてる。
それって、すげー幸せなことなんだと思う。
今回改めてそう思った。
「………ふふっ。」
「へ??」
真面目なことを言ったつもりが笑われてしまい、首を傾げると、城崎は俺の肩に頭を乗せる。
城崎から何か言ってくるわけでもなく、俺はさっきふと思ったことを話した。
「あの子すごいね…。あの若さでちゃんと考えてるんだもん…。」
「そうですか?つーか、性格には難ありまくりですけどね。それに、俺の先輩にこんなに心の傷負わせて、俺は一生恨みますけど。」
「治すよ。大丈夫。」
「そうですね。先輩ならきっと治せますね。」
今回の件で負ってしまった心の傷。
でも、自分でも分かるくらい確実に回復してる。
治った頃には、きっと今の自分よりもっと強くなれる。
「城崎はさ、どう思う?」
「何がですか?」
「今回色々あったろ?全部ひっくるめて、どう思った?」
「どう思ったって…。先輩と離れて寂しかった。不安だったし、なにより心配だったし、できればもう二度と経験したくないですけど…。」
「そっか。まぁそうだよな。」
城崎の言うことは尤も。
俺だって毎日不安で、苦しくて、寂しくて、辛かった。
「でも、経験してよかったのかも。」
「えぇ…?」
「俺も二度とこんなのごめんだけど、でも俺、嬉しいこともあったんだ。城崎と外で手を繋ぐことに抵抗なくなったのもそうだけど、親にもちゃんと話せて、それに城崎に愛されるって感じて。」
「付き合う前から、ずっと愛しまくってるんですけど。」
城崎はむぅっと頬を膨らませた。
抗議してる。可愛い。
「あはは。わかってるよ。でも、今まで以上に実感したんだ。本気で愛してくれてるって。だから俺、もう無敵だよ。」
「俺だって、先輩と一緒にいたら無敵だし。だからもう俺たちこれから向かうところ敵ナシってことですよ?」
「最強じゃん。」
「最強ですよ、二人でいれば。だから絶対にもう離れないでくださいね。」
「うん。」
抱きしめ合って、幸せに浸る。
あぁ……、幸せ……。
このまま時が止まればいいのに…。
「先輩、ここ泊めさせてもらう?」
「え?」
「空き部屋あるはずだから。それとも家帰る?」
まだ電車は走ってる時間だ。
城崎とこのまま朝まで誰にも邪魔されずに抱き合ってたいと思うけど…。
「明日は?」
「仕事…ですね。」
「じゃあ帰る。」
「電車でもこうしてる?」
「バカ。数分くらい耐えれるし…。」
名残惜しいけど、城崎から体を離す。
人前で抱き合うことはできないものの、手だけは離さなかった。
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