811 / 1069
第811話
診察予約時間から10分ほど遅れてクリニックに到着。
先生は快く俺たちを出迎えてくれ、無事に診察を終えた。
「やっと仲直りできたんですね。」
「ご迷惑おかけしました…。」
「いえ、とんでもない。本当によかったです。」
診察後、先生が少し話そうと提案してくれた。
ビジネス的な気遣いではなく、心から心配してくれていたらしい。
先生の安心したような声や表情からもそう感じた。
「きっと少しずつ望月さんの体調も戻るでしょうね。」
「本当ですか?」
「ストレスって、割と露骨に症状として体に出るんです。ほら、吐いたりとか食欲が出なかったりとか、望月さんも思い当たることあるでしょう?」
「まぁ、はい…。」
「ストレスと一緒になくなると思いますよ。まぁでも、念のため薬は今のままでいきましょう。来週まで問題なければ減量します。順調にいけば年内には薬も離脱できると思います。」
「ありがとうございます。」
治療方針を聞いてホッとして城崎を見ると、城崎も安心した顔で俺を見つめていた。
薬があって安心することもあったけど、やっぱり城崎の愛を実感するのが一番の治療薬な気がするし。
「では来週の同じ時間に予約しておきますので、またいらしてください。」
「はい。よろしくお願いします。」
席を立ち、診察室を出る前にもう一度先生を振り返ってお辞儀をする。
先生はニコニコしながら手を振った。
「デート楽しんでくださいね。」
「えっ?!」
「ふふ。」
城崎を見上げると、城崎はぶんぶんと首を振っていた。
どうやら城崎が先生に言ったわけではないらしい。
「エスパーですか…?」
「いや、お召し物が素敵なのであるいは、と思って。」
「今からランチして、プラネタリウムに行くんです。」
「ちょ、城崎?!」
「いいじゃないですか。どうせバレてるんだし。」
先生に気合い入ってる格好だと思われたのも少し恥ずかしいし、男二人でプラネタリウム行くとか、なんて思われるか…。
おそるおそる先生を見ると、変わらずニコニコ笑っていた。
「プラネタリウムいいですね、懐かしい。私も久々に家族と行こうかな。」
「お子さんはいらっしゃるんですか?」
「いや、まだ。でも預かっている子がいましてね。今度誘ってみます。」
「また感想教えてくださいね。」
「えぇ。望月さんと城崎さんも楽しんで。」
診察室から出て会計を済ませ、クリニックを後にする。
外は蝉の声と刺すような日差しで、歩くのすら億劫になってしまうほどの暑さだった。
「先輩、何食べたいですか?」
「とりあえずプラネタリウム近くのどこか入ろう…。暑すぎる…。」
「そうですね…。」
電車に乗って十数分。
プラネタリウムが併設されたショッピングモールで食事をとることにした。
ともだちにシェアしよう!