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第822話

祝日も明けて火曜日。 城崎と最寄り駅まで手を繋いで歩く。 「昨日の先輩はすごかったな〜。」 「な、何言ってんだよ?!」 「え〜?もっともっとって強請って、挙げ句の果てに俺を薬局に走らせたのは誰ですか〜?」 「っ!!」 デートの次の日から二連休。 二日間はもう一日中外へ出ずに、すっげーイチャついた。 土曜日以上にずっと肌を重ねていたし、逆に最後までシてないのが不思議なくらい…。 そう。 シてないのだ、最後まで。 多分…、頭がふわふわしてたから妄想の可能性はあるけれど、俺は昨日痺れを切らして何度も城崎に『挿れて』と言った気がする……。 それでも最後まではシてくれなかった。 ちなみに城崎を薬局に走らせたっていうのは、昨日の夜、俺の乳首が陥没どころじゃなく、触りすぎて肥大化していることに気づき、乳首スケ防止のために急いでニップレスを買いに行ってくれたことを言ってるのだろう。 「ニップレスって凄いですね。こんなに見えなくなるなんて。」 「誰のせいでこんなことに…」 「俺を煽った先輩では?」 「煽ってない!!」 城崎はジロジロ俺の胸元を見つめる。 そもそも挿れてくれてたら乳首そっちのけになって、こんなに大きくならなかっただろうと思うのは俺だけだろうか? 「あ〜……。仕事嫌だ。連休初日からやり直したい…。」 「俺は休みすぎたから仕事したい。」 「はぁ?!先輩は俺とのイチャイチャより仕事がいいって言うんですか?!」 「圧がすごいな…。違ぇよ。たまには息抜きも必要だろ?」 「ぷっ…。仕事が息抜きって、なんか逆な気がする。」 たしかに…。 城崎は可笑しいと言いながらクスクス笑っている。 バカップルのような会話を繰り広げながらホームで待っていると、いつも乗っている電車が来た。 乗り込むと、ムワッと湿った空気が漂っていた。 真夏の満員電車…。 地獄だ……。 「先輩、こっち。」 「…っ!」 城崎に腕を引かれ、ドアと城崎に挟まれる。 ここだけ別空間かと思うくらい爽やかなんですけど…。 城崎って汗かかないの…? 「先輩、大丈夫?つらくない?」 「や、全然。城崎こそ大丈夫か?」 「俺は先輩が目の前にいるから、何でも平気です。」 城崎はにこにこ嬉しそうに笑う。 朝のリーマンだらけの満員電車の中、そんな爽やかなオーラ放ってるのはおまえだけだよ…。 しばらく電車に揺られ、会社の最寄駅に到着する。 ここからは会社の人にバレないように、手を繋ぐのは我慢だ。 「この三日間、先輩にずっと触れてたから、なんか変な感じ。」 「変?」 「触れてないと不安になる。でも、我慢しなきゃですね…。」 城崎がしょんぼりした顔でそう言うので、俺もなんだか切なくなって、路地裏に連れ込んでキスしてしまった。

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