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第824話

「おはようございます。」 勤務時間1分前になんとか到着。 俺の声を聞いてなのか、みんながぱっと顔を上げた。 「望月くん!おかえり〜!!」 「体調大丈夫ですか?みんな心配してたんですよ!」 「主任がこんなに休んでどうすんだよ!まぁ顔色良さそうで安心した。」 「望月さんっ!待ってたんですよ!」 わいわいとみんなが駆け寄ってくれて、なんて心優しい人が多い職場なんだろうと感動した。 お詫びの品を渡して、みんなに挨拶する。 「ご迷惑おかけしました。仕事に穴をあけてしまってすみませんでした。今後の体調管理はより一層気をつけていきます。」 「そんなかしこまらなくてもいいよ。怒ってる人なんて一人もいないから。むしろ寂しいやら心配やら、特に年下陣が大変だったんだから〜。」 「はは…。」 ちゅんちゅん始め、俺よりも年下の同僚たちは目をキラキラさせていた。 これは今度飯でも連れて行かないと…。 みんなにありがとう、と伝え、デスクに向かう。 俺のデスクはちょっぴり書類の山はあるけど、思っていたよりも少なかった。 「おはよ、綾人。」 「涼真。色々ありがとな。城崎にもちらっと聞いた。」 「ははっ。ちらっとだけかよ。城崎らしいけど。」 行方不明になった俺を、涼真も一緒に探してくれたらしい。 それに、城崎の心が折れそうになったときも励ましてくれたそうだ。 恋人として、その役目を取られてしまったのは少し悔しいけど、涼真のおかげで城崎の決意は固まったとか。 「溜まってる仕事、これだけ?」 「あぁ。どうしても綾人じゃないと駄目なやつだけ残してるけど、あとはみんなで手分けして捌いたよ。」 「マジか。御礼足りなかったな…。」 「いいんじゃん?それに、城崎がほぼほぼやってたし。」 「城崎さんまで休んだときは大変でしたけどね〜。」 涼真と話していると、第三者の声。 この声はもちろん…。 「ちゅんちゅん、元気にしてたか?」 「はいっ!望月さんおかえりなさい!」 「ありがとな。助かった。」 「どういたしまして!望月さんが元気になってよかったです!」 褒められて嬉しいのか、にこにこなちゅんちゅん。 見ているこっちまで元気がもらえる。 「も〜。大変だったんですからね!城崎さんは謹慎になるし、そのせいで蛇目さんも三日間くらい外回り行けなくなるし。」 「え?」 「おい!このバカ…!」 愚痴るちゅんちゅんの口を、涼真が慌てて塞いだ。 今なんて……? 謹慎…? 城崎が……? 頭の整理がその言葉だけ処理する能力を持っていないみたいに、思考がフリーズした。 部長のデスクの方から、城崎が戻ってくる。 「……何ですか?この空気…。」 「城崎……」 「え?何?」 「城崎、悪い。ちゅんちゅんが…。」 「ほへんははい。」 嘘だよな…? 嘘であってくれ…。 「城崎、謹慎って何……?」 「えっ……。」 城崎は否定もせずに固まった。 本当ってこと…? どうして謹慎なんか…。 「城崎、ちゃんと説明して。」 「はい…。」 俺は城崎の手を引いて、会議室に入って鍵を閉めた。

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