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第830話

「絆創膏持ってくるから。それまで水で流しててくださいね。」 「うん…。」 もう血は止まったんだけど…。 城崎の言われた通りに水で傷口を流す。 さっきの城崎、エロかったな……。 「先輩?」 「うわっ?!早いな。」 「救急箱はすぐ出せるように、一番手前にしまってるので。それより顔赤い?大丈夫ですか?」 「だっ、大丈夫!」 城崎は心配して色々してくれてるのに、それにムラッとしたなんて口が裂けても言えない。 傷の手当てをするためにソファに座らされた。 「染みるかも。ごめんなさい。」 「っ!」 消毒液で消毒し、ガーゼを当てられる。 適当でいいのに…。 と思うけど、それは俺のこと思って真剣にしてくれてる城崎に失礼か…。 薬を塗って、絆創膏を貼って、城崎は満足そうに微笑んだ。 「これでよし。」 「ありがとう。」 「あとは俺が作りますから。先輩はゆっくりしてて?」 「でも…」 「いいから。」 さっきとは立場が逆転して、有無を言わさず交代させられる。 城崎は手慣れた様子で、サクサクと料理を作り上げていった。 「手際いいな…。」 「そりゃ、毎日大好きな先輩のために練習してますからね。先輩だって、その辺の人よりはできるじゃないですか。」 「でも怪我した。」 「それは俺が邪魔したから。ごめんなさい。まだ痛む?」 「痛くないよ。大丈夫。」 城崎は手を止めて、キッチンを見つめる俺のもとに来た。 抱きしめられて、額や耳にキスをされる。 「愛してる。好きだよ、先輩。」 「な、なんだよ急に…!」 「あと味噌汁作るだけだから。お湯ができるまで先輩チャージ♡」 「んっ…」 城崎に甘えられるのは好きだ。 キスに夢中になっていると、お尻を撫でられる。 ゾワゾワして身体をぴくつかせていると、城崎の人差し指がお尻の穴を掠め、ビクンッと身体が跳ねた。 「っ!!」 「ご、ごめんなさい!」 「いや、違うんだ…!俺の方こそごめん…。」 城崎は「そろそろお湯できたかな〜。」と言いながら、逃げるようにキッチンへ戻ってしまった。 眉が下がってたから、少なからずショックだったんだと思う。 何か勘違いをさせてしまっただろうか。 嫌だったわけじゃない。 反射的に身体が跳ねてしまっただけで。 「城崎…」 「ん、美味しい。先輩、ご飯できましたよ。」 「あぁ…。」 さっきのがなかったかのように振る舞われて、やっぱり傷つけてしまったのだと申し訳なくなる。 城崎はいつも通りに振る舞っていたけど、俺はどうすれば誤解が解けるのか悩んでいた。

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