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第831話
風呂は珍しく別々に入った。
今日は別で入ろうと提案したのは城崎の方だった。
やっぱり傷つけてしまったのだろうか。
先にベッドに潜って待っていると、30分ほどしてから城崎も寝室に入ってきた。
「先輩…、もう寝た…?」
「起きてるよ。」
振り返って布団を開けると、俺の隣に来てくれた。
抱きしめると、城崎も遠慮がちに俺の背中に手を回す。
「さっきはごめん。」
「え…?」
「気にしてるんだろ?」
何…とは言わなくても、本人が一番分かっているはず。
城崎は目を瞑って、小さくため息を吐いた。
「先輩、本当にごめんなさい…。」
「なんで謝るんだよ?つーか、嫌じゃないから。」
「だって…」
こいつ何でこんな鈍感なんだよ?!
気づいてほしくないときはすぐに気づくくせに!
「身体が跳ねるのはさ…、その…、前からじゃん…。」
「え?」
「敏感なとこ触られたら反応するだろ、そりゃ…。」
「え?え??」
「あー、もう!全部言わせんな!!」
城崎の手を掴み、勢いよく下着の中に突っ込む。
「俺はお前のこと好きなんだから、恋人なんだから!だからっ…、どこでも触っていいんだってば!おまえががっついてこないと、なんかこう…、変なんだよ!バカ!」
なんかつい最近もこんなことした気がする。
なんでこんな恥ずかしいことしなくちゃなんないんだよ!
「先輩……」
「あ!!」
「???」
デジタル時計が23時59分50秒を示しているのが見えた。
10…、9…、8…、7……
「先輩…?」
「城崎、誕生日おめでとう。」
「へ?」
「25歳。………え?合ってるよな?」
「忘れてました…。本当だ。いつの間にか誕生日だ…。」
城崎はぽかん…と口を開けていた。
本当に忘れていたらしい。
チュッと唇にキスをすると、我に返ったのか、ハッとした顔をして俺の体を抱きしめた。
「ふっ…、あはは!誕生日迎える瞬間に先輩のお尻直で触っちゃった!」
「ぷっ…、本当だな?」
「覚えててくれたの嬉しいです。もしかして、これ誕生日プレゼントですか?」
城崎は俺の尻をふにふに揉んで首を傾げる。
「バカ。違ぇよ。……でも、ごめん。プレゼントまだ準備できてなくて…」
「別にいりませんよ。先輩がいてくれればそれで。」
「やだ。渡す。」
「へへ。じゃあ期待して待っててもいい?」
城崎は幸せそうに目を細めて、俺のことを抱きしめた。
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