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第832話
どちらからともなく唇を合わせる。
キスはどんどん深くなって、尻を触られてるのも相まってか、下腹部に熱が集中していく感じがした。
「ん…、城崎…っ」
「先輩…」
城崎の指が尻の穴を掠めて、また大きく身体が震えた。
体を動かした拍子に、硬いものが太腿に触れた。
俺はそれに尻を擦り付ける。
「ちょっ…?!」
「城崎…、俺のこと好き…?」
「何当たり前のこと言ってるんですか。愛してます。世界で一番、愛してますよ。」
そう…だよな…?
じゃあなんで…。
「その……、なんでシないの……?」
とうとう聞いてしまった。
頑なに挿入だけはしてくれなかったから、理由があるんだと思う。
何となく理由は想像つくんだけど…。
でも、乳首も尻の穴も触られて気持ちいいって言ってんのに、シてくれないのが理解できない。
「えっ?!いいんですか…?!!」
「……?ダメ…なのか……?」
逆に聞き返されて、ぽかんとしてしまった。
俺、寧ろ結構アプローチしたつもりだったんだけど…。
「いや、まだ心療内科でもらった薬飲んでるし…、その、ダメなのかなって…。俺のこと怖いかなって……。」
「俺、挿れてって言ったじゃん。」
「あれは先輩が気持ちよくて何も考えられなくなっちゃったときでしょ?勢いでして、先輩が後悔するかもって思ったら怖かった…。」
城崎って、自分のことよりも何よりも、絶対的に俺を優先してくれるんだよな。
そうだ、そういう奴だった。
俺、愛されてるんだもん。
城崎を抱きしめて、目を見て伝える。
「後悔なんてしないし、怖くもないよ。大丈夫。」
「ほ、本当に……?」
「なんで嘘つくんだよ。つーか、俺だって足りてねーんだよ。」
「あ、あんなに喘いで射精しまくってたのに…?!」
「バカ!!物理的にじゃなくて、気持ちの問題な?!体はおかげさまで疲労困憊だよ。」
この一週間で全て搾り取られた。
出るもんも出ねぇよ。
でも、それでも城崎と繋がりたい。
心も体も全部。
「先輩…。」
「おぅ…。」
城崎が俺の前に正座する。
なんかこっちまで緊張してきた。
「抱かせていただいてもよろしいでしょうか…。」
「こちらこそ。よろしくお願いします。」
ぺこりとお辞儀すると、城崎は俺を抱きしめ……てはくれなかった。
肩に手を置かれ、しばらく静止。
「何……?」
「明日仕事じゃないですか…っ!!」
「え、うん…?」
「今抱いたら、先輩動けなくなっちゃいます。だから今夜はお預けで。」
「え?」
「さぁ、寝ましょう!」
今から抱かれると思っていたから拍子抜け。
あれよあれよという間に、ベッドに並んで横になる。
俺はまだ気持ちが置いていかれたまま、ぼーっと天井を見つめていた。
「先輩。」
「………」
「せーんぱいっ!」
トントンと肩を叩かれ、やっと現実に引き戻される。
城崎の方に顔を向けると、城崎は愛おしそうな目で俺を見て、耳に顔を近づけて囁いた。
「仕事が終わったら、めちゃくちゃに愛してもいいですか…?」
この後俺が眠れなかったことは言うまでもないだろう。
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