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第833話

「城崎さーん!誕生日おめでとうございまーすっ!」 出勤すると、営業部に入った瞬間、城崎目掛けてクラッカーが放たれた。 十中八九、犯人の目星はついている。 「こら!危ないだろ!」 「え〜?いいじゃないっすか!城崎さんって、望月さん置いては死ななさそうだし!」 「そういう問題じゃない!」 もちろん犯人はちゅんちゅん。 怒っているのは涼真。 うん…。本当にそういう問題じゃない。 というか、クラッカーで殺そうとするな。 「ちゅんちゅん……」 「なんすか!喜んでくれました?!えへへ〜。城崎さんなら喜んで…ッ」 「先輩に当たったらどうしてくれたんだ?俺が先輩と出勤するって想像つかなかったか?なぁ、答えろよ?」 「いだだだだ!痛い!怖い!!ごめんなさい!!!」 ミシミシと変な音が聞こえてきそうなくらい、城崎がブチ切れてちゅんちゅんの頭を潰そうとしていた。 ちゅんちゅんは城崎と俺に深々と謝罪し、しょんぼりしてデスクに戻っていった。 「城崎、怒りすぎたんじゃないか?一応祝ってくれたんだし…。」 「先輩に危害を加える者は皆敵です。」 「まぁまぁ。落ち着けよ。それより、ほら。誕生日プレゼント。」 涼真は城崎に箱を渡す。 恋人の俺はプレゼントすら準備できてないのに。 俺、マジで恋人失格では…? 「何ですか?」 「夫婦茶碗。悪い。もう持ってた?」 「いや、嬉しいです。ありがとうございます。」 夫婦茶碗か〜。 夫婦……。 「っ?!!」 「おーおー。綾人、嬉しいか?」 「気が早くね?!」 「もう同棲して大分経つし、そろそろ頃合いかな〜って。」 「いや…、そのっ…、まだそういう話は……」 そんな大事な話、俺から切り出したいのに、なんで友達のお前からするんだよ?! と、内心ツッコミながら、城崎の様子を伺う。 「へへ…。夫婦か…。」 「〜〜っ!!」 可愛い…!! 俺の彼氏が可愛いよぉ…。 あんな気の抜けた笑顔、俺だけの前でしか見せてほしくないのに。 「喜んでるみたいでよかった。……いでっ!何すんだよ、綾人!」 涼真をしばいて、コソコソ話す。 幸い城崎は嬉しそうに夫婦茶碗を見ている。 「俺も嬉しいけどさ!でもそういうのは俺から言いたいんだよ!」 「だって綾人に任せてたら何も進まなさそうじゃん。」 「とにかく!俺は慎重にいきたいんだから!変なことすんな!!」 「悪かったよ。でも城崎も喜んでんじゃん。な?」 「そうだけど…。」 あんなに嬉しそうな表情見ちゃったら、プロポーズとかどんなシチュエーションでするかとか、すげぇ悩む…。 いつか、俺から伝えたいな…。 漠然とそう思ってはいるけど、まだタイミングすら考えてない。 「先輩っ!そろそろ始業時間ですよ!」 「おー。」 ご機嫌な城崎に呼ばれて、俺と涼真はデスクについた。

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