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第834話

「城崎くん、ずっと好きでした…。これ、よかったら受け取ってください!」 「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいんですが、恋人がいるので受け取れません。」 また一人、若い女の子が泣きながら城崎に背を向けて去っていく。 「なぁ、あれ何人目?」 「四人目。」 「ぶはっ!数えてんの?」 昼休憩になって食堂へ移動してから、城崎は次々と声をかけられる。 誕生日プレゼントを渡すことをキッカケに、城崎に告白する女の子たち。 去年もこうじゃなかったっけ? 相変わらずモテるんだ、この男は…。 嫉妬で気が狂いそうになる前に、俺は城崎から距離をとっているんだけど、断るたびに俺の方へ帰ってくる。 「先輩、何で遠くに行くんですか?」 「見たくないから。」 「だから全員断ってるじゃないですか。先輩が嫉妬しないように。」 「わかってるけど、嫉妬しちゃうんだよ。だから俺が見えないとこでやって。」 また誰かが声をかけてくる前に離れようと席を立つと、城崎に腕を引かれる。 離してと伝えようと城崎を見下ろすと、ばっちり視線が合った。 「誕生日だから、ずっと先輩のそばにいたい。」 「うっ…。それはずるいだろ…。」 誕生日だから…、なんて言われて断れるわけもなく、城崎の隣に腰掛ける。 すると、城崎はご機嫌そうに麺を啜った。 「というか、もう来ないでしょ。あの噂広がって、陰でヒソヒソ言われてるみたいだし。」 「城崎、自分がどれくらい魅力的か分かってないだろ。」 「それはこっちのセリフですよ。先輩こそ、ご自身の魅力を過小評価しすぎです。」 「なあ〜。その惚気合いはいつまで続くんだよ?」 涼真がジト目でこっちを見る。 惚気てたつもりではないけど、たしかに側から見ればただの惚気なのかもしれない。 「恋人がモテるのも考えものだな。告白以外も女の子からのプレゼントは断ってるんだっけ?」 「だって俺だったら嫌だもん。先輩が他の女からもらったもの使ってたら。」 「おー怖。」 「だから受け取らない。気持ちだけもらってる。」 涼真の質問に、城崎はそう返した。 城崎の言う通り、俺も城崎が好意はないにしろ他の女の子からもらったものを日常的に使ってたら、なんかモヤっとするかもしれない。 というか、普段関わりのない人がプレゼントなんて、告白してこなくたって気持ちはあるだろうしな…。 「俺には先輩だけだからね?」 「わかってる。」 「早く帰って二人きりになりたいです。」 「うん…。」 テーブルの下でそっと手を繋がれる。 二人きりになったら、キスして、いっぱい触れ合って…。 今日は俺から色々シてあげたいし、リードしたい。 俺が怖がってるなんて、もう二度と勘違いしないように。 幸いにも今日は金曜日。 多少無茶したって、明日は休みだし。 「夜、楽しみにしてる。」 城崎の耳元で囁くと、城崎は目を見開いて俺を見て、わなわなと震えていた。

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