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第837話

中指を第一関節まで入れて手を止める。 これ…、無理かも……。 指一本ですら第一関節までで違和感感じてるのに、城崎のあんなデカいの……。 気持ち良さでなんとかなる? いや、無理だろ。無理無理無理。 初めてのとき裂けたもん。 「……っ」 頭の中でネガティブなことばっかり考えてるけど、城崎を受け入れたい気持ちはもちろんあって、だからせめて指一本くらい自分で頑張りたい…。 指にローションをたっぷり纏わせて、ゆっくり息を吐きながらもう一度トライする。 変な感じだ。 自分でしても気持ちよくないどころか、違和感しかなくてやめたい。 この前城崎にイジられたとき、あんなにも気持ち良かったのに…。 俺、感じにくくなったとか…? ペニスもどんどん萎えてきて、焦りすら芽生えてくる。 鏡に映る俺は、不安でいっぱいでどうしようもないような、そんな表情をしていた。 「先輩?大丈夫?」 コンコン…とノック音がして、城崎の心配そうな声が聞こえる。 心臓飛び出るかと思った。 「も、もう出る!」 「本当?じゃあ先にベッドで待ってるね。」 人気(ひとけ)が去り、少しホッとする。 でも、もうそろそろ上がらないと…。 城崎が心配してるし、それにここで頑張ってても、不安がどんどん強くなっていくだけな気がする。 最後に全身をシャワーで流し、浴室を後にした。 脱衣所には下着と茶色のバスローブが畳んで置いてあった。 ふわふわで気持ちよさそう。 いつの間にこんなもの買ったんだろうか? 体を拭いてバスローブに袖を通すと、一気に緊張感が高まる。 バスローブって、ホテルでしか着ないから、なんだか今から抱かれるって実感が湧いてくる。 自分でも分かるくらい心拍数が速くなった。 髪を乾かして、丁寧に歯を磨いて、最後に唇にリップクリームを塗る。 今夜、城崎に抱いてもらうんだ。 ローションとゴムの残りあったよな…? 用意周到な城崎が忘れるわけないし、もしなかったらそれは"今日はシない"という意思表示だろうけど…。 ていうか、俺としては最悪なくてもいいっていうか…。 城崎にその気がなくても、その気にさせたい。 俺のこと抱きたいって思わせたい。 俺と繋がって、いっぱい気持ち良くなってほしい。 「めちゃくちゃ好きじゃん、俺……」 いつもそうだ。 城崎のこと考えると、好きで好きで堪らなくなる。 城崎といると楽しくて、城崎と繋がった時は例えようのないくらい幸せを感じる。 思い出しただけでこんなにも幸せなのに、ウジウジ考えているのが馬鹿らしくなった。 悩まなくたって、城崎は俺のことを気持ち良くしてくれるし、幸せにしてくれる。 それに例え、俺が全然感じなくても、きっと城崎はそれに対して怒ったりもしないし、俺も気持ち良くなれるように努力してくれる。 今までの城崎の言動や行動が、俺にちゃんと教えてくれる。 愛されていると。 不安に思うことなんて、何一つなかった。 「よし。」 バスローブの紐を締め、脱衣所を後にした。

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