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第845話

「………と……、…綾…人さん…、綾人さんっ!」 「!!!」 名前を呼ばれながら揺さぶられ、ぱちっと目が覚める。 裸で布団に包まる俺、俺を起こす城崎。 時計は9時を示していた。 「なんだ…。まだ寝れるじゃん……。」 「今日クリニックの受診ですよ!」 「えっ…。あっ?!」 言われて思い出し、上体を起こす。 瞬間、ピキッ…とした痛みが尻から腰にかけて走り、床に手をついた。 「綾人さんっ?!」 「へ、へーきだから…。」 「痛い?やっぱり昨日…」 「平気だってば!」 痛みが走ったのは事実だけど、城崎に後悔してほしくない。 少なくとも俺は後悔してないし、幸せだった。 「綾人さん…。」 「大丈夫。ほら見ろ。ピンピンしてるだろ?」 自ら腰を叩いて大丈夫だとアピールする。 痛え。 けどそれより今は…。 肩に置かれた城崎の手を退け、時計を見る。 やっべー…。あと1時間しかないじゃん。 「それよりなんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ!もう出なきゃ間に合わねーじゃん!」 「何度か起こしましたよ?だって俺は朝から綾人さんのことた〜〜っぷり甘やかして、なんなら今からもう一回愛したいくらいだったもん。綾人さんが起きないから!」 「あー、わかったわかった!ごめん!俺が悪かったから、嫌味言うな!」 拗ねる城崎に謝ると、城崎は俺の脚の間に寝転び、ペニスに顔を寄せた。 萎んでいた俺の中心は、硬度を持ち、むくりと起き始める。 「ば、バカ!」 「帰ったら綾人さんのこと、い〜っぱい愛してもいいですか?」 「昨日散々ヤッたろ?!」 「でも綾人さんのここ、期待して大きくなってますよ?」 「不可抗力!」 城崎をゲシゲシ蹴って、ベッドから降りて身支度を始める。 服を着ながら、昨日のことが夢じゃなかったのだと実感する。 聞き慣れない名前呼び、鮮明に思い出せるくらいの強烈な快感、痛む肛門、悲鳴を上げる節々、身体中に無数のキスマーク。 全部城崎が俺を愛した証拠。 思い出しただけで全身が熱くなる。 「ねぇ〜綾人さん。本当にダメ?」 「しつこい。」 「もっとそばに居たい。繋がりたいなぁ…?」 くぅん…としょげたワンコみたいに眉を下げる城崎。 うぅ……。 俺はこの顔に本当弱い。 「夜…、な。」 「!!」 「我慢できるか?」 「はい!ちゃんと"待て"しますっ!」 城崎はぎゅぅっと俺を抱きしめ頬擦りし、数回触れるだけのキスをした。 ディープキスに変わりそうなのを察して、先に城崎から離れる。 下着を履いて洗面所で歯を磨いていると、鏡越しに城崎が近づいてくるのが見えた。 「好きだよ、綾人さん…♡」 「こら。手ぇしまえ。」 「う〜……。」 城崎は俺を背中側から抱きしめ、首筋に顔を埋めながら、手を下着の中に伸ばす。 ぺしっと手を叩くと、寂しそうに眉を下げた。 「早く行って早く帰りましょうね?」 「できるだけな。」 「帰ったらご褒美ね?」 「はいはい。」 「約束ですよ!」 城崎は満足そうに笑い、俺の首筋にジュッと吸い付いて痕を残す。 新しくつけられた印は、俺が城崎のものだと証明するかのように一際目立っていた。 城崎は一足先に洗面所を出て行った。

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