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第850話

気怠さと気持ち良さに脱力し、城崎とソファで横になったまま抱きしめ合う。 トクン…トクン…と脈打つ心音が心地いい。 「綾人さんさ…」 「うん?」 「フェラめちゃくちゃ上手くなってない…?」 「ぶっ…!?」 何を言われるかと思ったら、少し疑うような目を向けられて思わず咽込んだ。 上手くなってるかどうかと言われれば…、そりゃ…。 「………練習したし。」 「え…?」 「城崎のこと気持ち良くしたくて…、ちょっとだけ…」 ネットで調べてイメージトレーニング。 あと本当にたまにだけど、ディルドを使って何度か…。 城崎のことを気持ち良くできたのはよかったけど、上達がバレているのが恥ずかしくて顔が熱くなる。 「え〜。ディルドに嫉妬しそう〜。」 「は、はぁっ?!」 「でも俺のためだもんね?ありがとう♡」 「……どういたしまして。」 城崎はチュッチュと何度も俺にキスしてご機嫌そうだ。 こんな喜んでくれるなら、練習も無駄じゃなかったなと思う。 「俺こんなに愛されて幸せだな〜。」 「俺も…。幸せ…。」 「綾人さんっ!!可愛いっ!!!」 「痛っ」 ぎゅうぅっと抱きしめられて痛いけど幸せ。 こんなに全身全霊で愛してくれていたら、何の不安もないはずなのに。 やっぱりあの頃の俺の心は不安定だったのだと再認識する。 「城崎、俺のこと見捨てずにそばにいてくれてありがとう。」 「……?当たり前じゃないですか。」 俺のそばにいることが城崎にとっての当たり前。 何それ。めちゃくちゃ嬉しいじゃん。 「愛してるよ、夏月。」 「!!俺も!俺も愛してますっ!大好きっ!」 「ははっ!だから痛いって!」 名前呼びで明らかに上機嫌になるのが可愛くて仕方ない。 何度も深いキスを交わして、最後にチュッと触れるだけのキスをして唇を離す。 「そうだ。綾人さん、スマホ出して?」 「ん?そこにあるよ。」 「ちょっと借りますね。」 城崎は生体認証でロックを外し、俺のスマホを操作していた。 浮気する気はさらさらないし、秘密という秘密はもう全部バレてる気がするけど、俺のスマホは城崎にとってロックなんてないも同然だから、サプライズとかスマホでやり取りはできないなーと改めて思う。 「はい。終わりました♡」 「何してたんだ?」 「お互いの位置が分かるGPSです♡前みたいに綾人さんが迷子になっちゃったりとか、あとはシンプルに浮気防止のために♡」 「あれは迷子じゃないし!」 「迷子でしょ。」 「あと浮気なんかしない!」 「分かってるけど、蛇目みたいに綾人さんのこと酔わせたり眠らせたりして何かしようとする悪い輩もいるんですからね?何かあったらすぐに助けに行きます♡」 まぁたしかに…。 前科があるから、そう言われると安心する…かも…。 「俺も城崎の場所分かるのか?」 「もちろん。俺の帰りが遅くて不安だとか、出張先で何してるか心配〜って時は確認してください♡なんならいつでも連絡してくださいっ♡」 「ふーん…。」 こうして俺のスマホにアプリが追加された。 あんまり最近の恋愛事情とか分からないけど、こういうアプリもあるんだ。 こんなのあったら世の中のカップル達は浮気なんかできないなーと後日涼真に話したら、「普通じゃねぇよ。」とドン引きされてしまったのだった。

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