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第852話

しばらくして営業部に戻ると、うるさい奴が帰ってきていた。 みんなに囲まれて、なんだかワイワイ盛り上がっている。 「あ!望月さん!城崎さん!!見てくださいっ!」 「何?声デカい。」 耳を塞いで嫌な顔をする城崎を連れて、ちゅんちゅんの元へ向かう。 そこには立派なスイカがあった。 「営業先で頂いたんです!」 「へぇ〜。やるじゃん。よかったな。」 「それでね!今週末、みんなで海に行きませんか?!」 「「は?」」 また突拍子もないことを言うちゅんちゅん。 こいつのいう"みんな"の範囲はどこからどこまでなのか。 それによって返事は変わってくるけど。 「いいねぇ。行ってやりな、望月主任♪」 「こういうときだけ主任って言わないでくださいよ!」 「いいじゃん、望月くん。雀田くんの相手してやりなよ〜。」 「久米さんまで…」 営業部のベテラン達はちゅんちゅんのことを我が子のように甘やかす。 俺たちは我が子に気に入られた近所のお兄さん…みたいな感じなのだろうか? 「ちなみになんで海?」 「そりゃあ、こんな立派なスイカ、みんなでスイカ割りするしかないじゃないですか!」 「彼女と行けよ。」 「城崎さんって、俺の彼女を大食いか何かと勘違いしてます?」 「いや、お前が食えよ。」 「俺と彼女だけでこんなに大きなの食べれませんって!」 まぁ確かに大きいけど…。 でも今週末は…。 「悪い、ちゅんちゅん。今週末は俺も城崎も予定あって。」 「えぇ〜?!」 「11日なら行けるけど、ちゅんちゅんはどう?」 週末はお盆だ。 城崎と一緒に俺の実家に帰る予定。 どうしても今週末だけは譲れない。 「ちょ…、先輩!11日は俺と…」 「いいじゃん。今年は海も行ってないし。」 「そうだけど…」 「11日行けます!!」 城崎は少し残念そう。 11日は祝日。 城崎が実家に挨拶行く前に色々揃えておきたいと言って、デートする予定だった。 俺としては別に手土産持って行くくらいで、そのまんまの城崎を見せたいから事前準備はいらないと思っていたし丁度いい。 「誰連れて行く?」 「えっとね〜。俺と彼女と、望月さんと城崎さんと〜、あと柳津さんでしょ〜。」 「俺はパス。」 「え?」 声の方に視線を向けると、涼真が暗い顔でノーサインを出してきた。 珍しい。 理由を聞こうとすると、俺より先に城崎が尋ねた。 「何でですか?彼女も連れて行けばいいじゃないですか。」 「えぇっ!柳津さん、彼女いるんですか?!聞いてない!」 言ってねぇもんな。 と言うツッコミをできる雰囲気ではなかった。 涼真から漂うオーラが驚くほど病んでいたからだ。 ちょうど12時。 俺は涼真を連れ出して、近くの飯屋に入った。

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