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第854話

都内の一等地。 健常者でも名前くらいは聞いたことあるくらいの、有名な大病院だ。 「すご…。涼真の彼女、こんなとこで医者やってんの?」 「それすらデマかもですけどね。」 「つーか、会えんのかな?」 「何も考えずに来ちゃうあたりがバカで可愛いです。」 「バカ?!」 ショックで固まっていると、城崎が「あ。」と声を出す。 俺も城崎の見ている方へ視線を移すと、そこには倉科さんの姿があった。 「透さん、何してるんだろ?」 「さぁ…?」 「ちょっとトイレ行ってきていいですか?」 「は?今?!」 「戻ってくる時、ついでに透さんに声かけてきます。」 「ちょ、城崎っ!」 城崎は病院に入って行った。 ちょうど入れ違いくらいのタイミングで、探していた姿が目に入る。 あの人だ!!涼真の彼女!! 「もう!城崎の奴、タイミング悪すぎだろ!」 慌ててメッセージを打っていると、涼真の彼女はまさかの倉科さんと接触した。 待て待て待て待て。 どういうこと?! たしかにお似合いではあるよ?! もしかして涼真の言ってたイケメンって、倉科さんのこと?! 急いで城崎に電話をかけると、もうトイレは済んだのかすぐに電話に出た。 『もしもし?綾人さん?』 「バカ!早く帰ってこい!!」 『?』 「あ!あーーっ!!」 涼真の彼女は倉科さんの車に乗ってどこかへ行ってしまった。 程なくして城崎が帰ってくる。 「あれ?透さんは?」 「たった今、涼真の彼女連れて行っちゃったよ!!」 「は?そんなわけ…」 こいつ、恋人の俺より倉科さんのこと信じるってこと? 俺本当に見たのに…。 「俺見たもん!!」 「あー…、なるほど。綾人さん、透さん家行きましょう。」 「なんでだよ?!圭くんがいるのに家に連れて帰るわけないだろ?!」 「いいから。」 城崎に手を引かれ、駅に向かう。 今は涼真のピンチだっていうのに、手を引かれたくらいでドキドキしてんなよ、俺のバカ! でも強引な城崎格好良いんだよな…。 「あー、そうだ。柳津さんも呼んでおいてくれますか?」 「おまえ鬼畜なの??」 「綾人さんって本当鈍感ですね。」 「馬鹿にしてる?」 「ちょっとだけ。」 どうやら俺は鈍感らしい。 涼真を呼ぶのを渋る俺を見て、城崎は自分から涼真を呼び出した。 本当に何考えてんの? 浮気してる張本人たちと現恋人を全員鉢合わさせるとかありえねぇよ…。 心の中で涼真に謝りながら、城崎に連れられて倉科さんの住むタワーマンションに到着した。

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