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第859話

城崎の手が脇腹や脚、感じるところを滑るたびに声が漏れる。 こんなの不可抗力だ。 出したくて出してるわけじゃない。 「ぁっ…、城崎っ…、んん…」 「境目で焼けたらいけないので、ここも塗りましょうか。」 「ひゃぁっ…、いやっ!そこは塗らなくていぃ…っ!」 「もう手に出しちゃったから、勿体無いし塗りましょうね。」 「あっぁ♡」 城崎は俺にバスタオルを掛け、その下で必要のないところに日焼け止めを塗り始めた。 お尻を揉まれて、我慢できずに声が漏れる。 そこは水着で隠れてるから塗らなくていいのに…! 境目焼けしないようにとか適当な理由つけて、尻に触りたいだけだ!絶対そうだ! 「綾人〜。ちゅんちゅん来たぞ〜。」 「ちっ。」 「りょ、りょーまっ!!」 やっと現れた助け舟に、涙ながらに手を伸ばす。 城崎は舌打ちして俺の水着の中から手を出して、バスタオルに俺を包んだまま、涼真から隠すように抱きしめた。 「何?パラソルの外出てたのか?めちゃくちゃ顔赤いけど。」 「お、おう…。」 本当は一歩も出てないけど…。 焼けたってことにしとこ。 「つーか、澪さんは?」 「向こう行きましたけど。」 「はぁっ?!なんで止めねーんだよ!馬鹿!!」 城崎の他人事のような返事に、涼真は慌てて飛んでいってしまった。 ナンパされているであろう彼女を助けに。 そして残されたのは…。 「おはよーございますっ!望月さん!城崎さん!」 「こんにちは。いつも琥太郎がお世話になっております。」 ちゅんちゅんと、そして小柄で可愛らしい女の子。 「彼女の愛梨(あいり)です!可愛いでしょ〜!」 「ちゅんちゅん、やるじゃん。」 「へっへ〜ん。お二人に負けないくらいラブラブなんすから!」 「「あ……。」」 ちゅんちゅんはナチュラルに失言した。 彼女はきょとんと目を丸くし、俺と城崎を見つめる。 「お二人、お付き合いされてるんですか?」 「えっと……」 「うん。付き合ってるよ。」 「城崎っ?!」 「いいじゃん。どうせちゅんちゅん隠すの下手だし。」 言うかどうか躊躇っていたら、何の躊躇もなく城崎が告白した。 こいつはなんでこうも偏見とか気にしないの?! 反応によっては今すぐにお暇した方がいいのではと、愛梨ちゃんの反応を伺うと、ぱぁっと目を輝かせていた。 「え!え!本当にっ?!こんなイケメン同士が?!」 「へ…?」 「リアルですか?!リアルラブなんですかっ?!!嘘っ!初めて見ましたっ!えっ!友達に教えてもいいですかっ?!」 「あ、愛梨…??」 「わー。出た。腐女子。」 愛梨ちゃんは鼻息を荒くして俺と城崎に詰め寄る。 この反応、どこかで…。 あぁ…。千紗だ……。 そして、彼女が腐女子だったことをちゅんちゅんも知らなかったらしい。 とても困惑してるようだった。 「えっと…、あまり広めるのはやめていただきたいというか…。」 「分かりましたっ!」 「助かります…。」 さっきまで不安だったのが嘘みたいに、今は反応に困ってる。 どう対応するのが正解なんだ…? 「綾人さん、放ってていいですよ。色々教えるとややこしいから。」 「わ、わかった…。」 城崎は呆れた様子で俺の腕を引いて、俺を抱きしめて寝始めた。 パラソルの外では愛梨ちゃんの黄色い声が上がっていた。

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