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第860話

「おい。おまえら幅取りすぎ。」 「い"っ…!!」 「もっちーさん!お昼ご飯ですよ〜!」 ゲシゲシと城崎越しに蹴られて目を覚ます。 買い出しに行っていた二人が帰ってきたらしい。 どうやら俺は、城崎の腕の中でじっとしているうちに、いつの間にか寝かけていたようだ。 「あ〜。もう絶対俺から離れないでね?澪さん。」 「ごめんなさい。そんなにくると思わなかったのよ。」 「自分の魅力を過小評価しすぎです。ナンパされるって誰でも分かりますよ!?」 遅れて涼真たちも帰ってくる。 やっぱり澪さんはナンパされていたらしい。 「透さん、すみません。おかえりなさい。」 「夏月、焼きそばでいいだろ。」 「ありがとうございます。」 「もっちーさんはどっちがいい〜?浜焼きかフランクフルト〜。」 圭くんの右手には浜焼き、左手にはフランクフルト。 どっちも美味しそう。 「フランクフルトで。」 「何勝手に決めてんだよ!」 「はい、あーん♡」 「んぐっ…!」 決めかねていると、城崎が圭くんからフランクフルトを奪い取り、俺の口に突っ込んだ。 こいつ…!! 「んんっ!」 「ほら、噛んで♡」 パリッ。 言われるがまま噛みちぎると、城崎は顔を歪めた。 「痛〜い…。」 「はぁっ?!おまえが噛めって言ったんだろ!」 「今フランクフルトが俺に乗り移りました。」 「意味わかんねぇ。」 なんだよ、この下ネタコント。 城崎の手からフランクフルトを奪い取り、もぐもぐ食べる。 そんな俺たちを見て、倉科さんと圭くんは笑っていた。 「夏月ってやっぱりバカだよな。」 「いつもクールな感じなのに、もっちーさんのことになるとキャラ崩壊しちゃうんだね。ふふっ…!」 「望月さんが幻滅しない人で良かったな、夏月。」 本当にな!! 女の子だったらドン引きしてんぞ、マジで。 俺が男なのと、城崎のこと好きすぎるからいいとして…。 「綾人さん、焼きそば食べる?」 「ん。」 「あーん♡」 でもなんか、今日の城崎はいつもより楽しそう。 俺たちの関係を知ってる人と出掛けてるおかげで、人目を気にせず楽しめているからだろうか? やっぱりいつもは俺のために我慢してくれてるってことだよな…。 「あ、綾人さんっ?!」 「あー!もっちーさんが夏月くんに甘えてる〜!」 城崎の膝に頭を乗せると、城崎はびっくりしてるし、圭くんは揶揄ってくるし、おまけにパラソルの外ではまた愛梨ちゃんの悲鳴が聞こえるし…。 まぁ城崎が嬉しそうに笑ってるから、たまにはいいか。 城崎に髪を撫でられて、そのまま微睡(まどろみ)の中へと誘われた。

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