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第861話

暑い。寝苦しい。 寝る時はエアコンつけてるはずなのに…。 ん……? 「?!」 「あ。やっと起きた。おはよ、綾人さん♡」 ガバッと体を起こすと、家じゃなくてビーチだった。 そうじゃん。俺、城崎の膝枕で…。 「顔赤い。暑いの?それとも照れてるだけ?」 「うるさい。てか、みんなは?」 「あっちです。」 城崎の示す方向を見ると、バレーコートで楽しんでいる4人と、それをコートの(かたわら)で日傘をさしながら優雅に見学する美しい兄妹の姿。 「雀カップル対柳津さんと圭さんです。」 「あの二人は混ざらないの?」 「汚れたくないんじゃないですか?それに、もう歳ですし、体力もないんでしょ。」 「あ……。」 俺のことしか視界に入れていない城崎は気づかなかったようだ。 後ろから倉科さんが近づいていたことに。 「望月さん、起きたんですね。」 「はい…。すみません、迷惑かけてしまって…。」 「いえ、お構いなく。」 背後から聞こえる倉科さんの声に、城崎が顔を青くする。 怯えるなんて珍しいこともあるもんだ。 倉科さんは、そーっと逃げようとする城崎のラッシュガードの襟をむんずと掴んだ。 「いだだだだっ!!!」 「それより、誰が歳だって?」 「ごめんなさい!!」 「勝負しろよ、夏月。おまえと望月さん対俺と圭で。」 「それって、ビーチバレーを通して愛の力を比べ合うってことですか?……望むところです。」 えぇ…。 なんか面倒なことになってきたんだけど…。 「負けた方は何かペナルティとかつけます?」 「一週間セックス禁止。」 「は?!」 「可哀想だからキスくらい許可してやるよ。」 「なんで俺たちが負ける前提なんですか。」 「今に分かるよ。」 軽い遊び程度に思っていたらしい城崎は、倉科さんに煽られてスイッチが入ったらしい。 どう考えても怒らせちゃいけない人を怒らせただろ。 俺でも分かる。あの人は怒らせちゃいけないって。 「絶っっっ対に負けません!綾人さん、アップしますよ!」 「俺、バレーはそんなに…。」 「任せてください!アタックも拾うのも全部俺がやります。綾人さんはネット際でトスを上げてくれればそれだけでいいんです!」 「本当かよ…?」 城崎ならやってくれそうな気もするけど…。 でも相手はあの倉科さん。 向こうも圭くんへの負担を軽くするために、動くのはほぼ倉科さんだと容易に想像できる。 「おい、圭。戻ってこい。」 「え〜?」 「いいから。」 涼真に声をかけて圭くんが小走りにこっちへ来た。 ばちばち睨み合う二人を見て、不思議そうに首を傾げる。 「どうしたの?」 「倉科さんと圭くん対城崎と俺でビーチバレー対決するんだって…。」 「えぇっ!何それ!楽しそう!」 圭くんは嫌がるどころか目を輝かせて喜んでいた。 ペナルティのことも知らなさそうだし…。 純粋で可愛らしいな…。 しばらくアップした後、コートで向かい合う。 どこから広まったのか大勢のギャラリー。 そりゃあ、こんなイケメン二人が、惜しみなく腹筋曝け出して、本気のビーチバレーするんだもん。 「望月さーん!頑張ってくださーい!」 「綾人も義兄(にい)さんも頑張れー!」 「ちょっと、涼真!気が早い。」 声援の中に惚気が混ざってるんですけど…。 大勢のギャラリーに見守られながら、俺たちの性生活を賭けたビーチバレーが幕を開けた。

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