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第863話
「立派なスイカだな。」
「本当だねぇ。美味しそう〜。」
「誰が割る?」
「じゃんけんで挑戦していきましょうよ!」
スイカを前にみんなで話し合う。
俺は見てるだけでいいし、割りたい人がすればいいと思うんだけど…。
「俺はパス。」
「私もパス。」
「澪さんがやらないなら俺もパスで。」
「じゃあ俺も…」
「ダメです!俺が辞退するので、綾人さんは参加です!!」
倉科さん、澪さん、そして涼真。
年上組がどんどんパスしていく中、俺も便乗すると城崎に却下された。
なんでだよ…。
「じゃあ参加は俺と愛梨と松島さん、あと望月さんですね!」
「いや、俺は…」
「じゃーんけーんぽんっ!!」
話聞けよ!!
俺は手を出していないから、じゃんけんしている手は三人分のはずなのに、何故か四人分手が見えるのは俺の幻覚か…?
「綾人さんの分出しときましたよ♡二番手です!」
「城崎かよ!」
「俺がしっかり指示出しますから♡」
どうしてそんなにも俺にスイカを割らせたいのかが不思議で仕方ない。
スイカ割りの順番は愛梨ちゃん、俺、圭くん、ちゅんちゅんになった。
割れた時点で終わりだし、愛梨ちゃんが割ってくれればそれで終わり。
みんなと一緒に指示を出す。
「愛梨!もっと右!」
「そこそこ!下ろしちゃえ!」
「いや、30度左だろ。圭、自分がやりたいからって適当な指示出すな。」
「30度ってどれくらいですか〜っ?!」
「時計の1時間分左に回って振り下ろして!」
愛梨ちゃんは混乱した様子で振り下ろす。
スイカのわずか3cmほど左に棒は着地した。
「惜しい〜!」
「まぁでも、女の子の力じゃ割れなかったかもね。」
「次!綾人さんへの指示は俺が出しますっ!」
城崎は何をそんなにワクワクしてるんだよ…。
目隠しをされ、その場でクルクル回転させられる。
やば…。これ超目ぇ回るじゃん…。
前も後ろもわからない状態でよろける。
「綾人さんっ!まっすぐ進んでください!」
「こ、こっち…?」
「はい!次は右に90度回って、三歩進んで…」
本当に90度回れてるかは分からないけど、言われた通りに動く。
スイカはどこ…。
というか、どんどん城崎の声が近づいてる気がする。
「はい、そこで棒を手放す!」
「は…?」
「手を広げて〜!」
「ちょ、何…っ!?」
ぎゅぅっと抱きしめられ、はらりと目隠しが落ちる。
目の前には声の主。
「城崎っ?!」
「綾人さん、捕まえた♡」
「あっははは!おまえら何してんだよ?」
スイカと真逆…。
涼真はケラケラ笑っていて、みんなは次の準備をしていた。
俺は一体何してたんだよ…。
「綾人さん可愛い〜…♡」
「意味わかんねぇ…。」
「前も後ろも分からない綾人さんが、俺の指示を信じて動いて、俺を抱きしめてくれるなんて最高じゃないですか?」
「わかんねぇよ…。」
城崎が俺をスイカ割りに参加させた理由は、これをしたかっただけらしい。
城崎に抱きしめられたまま、スイカ割りの続きを見守った。
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