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第865話
戻ると肉のいい匂いが漂っていた。
もう初めに網に乗せた分は焼けていて、みんな食べながら追加で次々と焼いている。
「わぁ〜!美味しそう!」
「ほら。」
「ありがとう、透!」
機嫌を直した圭くんは透さんの隣で肉を食べながら、時々透さんに食べさせてあげている。
さっき拗ねていたのが嘘みたいだ。
「綾人さん、俺たちも食べましょう。」
「おう。」
働かざる者食うべからず。
そう思ったけど、みんな気にしていないらしく、俺たちの皿にもこんもりと肉が積まれていた。
肉を食って焼くのを交代する。
「綾人、サンキュー。」
「ビール買ってきたよ。クーラーボックスに入れてる。」
「あー…。でも澪さん運転するから、俺だけ飲むのもな…。」
涼真が遠慮してるのを見て、澪さんは缶ビールを持ってきて涼真に手渡した。
「いいわよ、飲んで。」
「でも…」
「気にしないで。帰って透に貰ったワイン開けるから。」
「本当?いいの?」
「うん。」
本当に何も気にしてなさそうな澪さん。
涼真は遠慮がちにプルタブを開ける。
「かーっ!美味ぇ…!」
「うっ…。」
涼真に勧めたはいいが、そんないい飲みっぷりを見ていたら、自分も飲みたくなってくる。
隣で肉を焼く城崎のTシャツをツンツンと引っ張った。
「どうしたんですか?」
「…………飲んでもいい?」
「ん?」
「ビール…。飲みたい……。」
城崎と出会ってから、お酒でやらかしたのは一度や二度ではない。
だけど真夏の屋外BBQ…。
どう考えてもビールが一番美味いじゃん!!
「はぁ…。」
「ダメか…?」
「いいですよ…。」
「!!」
「ただし、俺の視界から離れないでください。」
条件付きだけど許可が下り、俺はクーラーボックスまで小走りで行き、ビールを二本持って城崎のもとへ戻った。
「一緒に飲もう!」
「あー…。俺は途中で澪さんと運転変わろうと思ってるから…。」
「あら?いいわよ。その様子じゃ、酔った望月さん気にして運転どころじゃないでしょう?」
「いいんですか?」
「代わりに今度、美味しい白ワイン待ってるわね?」
「よろこんで。澪さん、お言葉に甘えますね。」
城崎はホッとしたように俺の手から一本ビールを受け取る。
プシュッと良い音立ててプルタブが開く。
「乾杯!」
一気に流し込むと、最高の喉越しを感じた。
ビールうめぇ…!
涼真とも乾杯して、すぐに一本飲み切ってしまった。
「こら。ペース早い。」
「だって…。ん〜…、城崎……」
「久々のアルコールなのに一気に煽るから…。柳津さーん、綾人さんと焼くの変わってください。」
「早いな。」
「このままだと火傷します、綾人さんが。」
「そうだろうな。」
涼真にトングを取られ、俺はビール片手に城崎のすぐそばの椅子に座って、心地良く酔いながら肉を頬張っていた。
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