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第868話

ドアを開けたまま、俺を見つめて固まっている城崎。 絶対引いてる…。 弁明しようがない状況に俺も固まっていると、先に動いたのは城崎だった。 「どういう状況でしょうか…。」 「っ!」 敬語怖ぇよ! 俺の精液を人差し指で掬い、まじまじと見つめている。 恥ずかしい。恥ずかしすぎて死にたい。 「今、俺の名前呼んでた…よね?」 「……っ」 「ちょっと…、約束守れそうにないんですが…。」 「し、城崎…?」 「綾人のせいにして、約束破っていい?」 突然の呼び捨てにドキッと心臓が鳴る。 城崎のわずかな理性は飛びかけている。 きっと余裕なんてないんだと思う。 城崎の欲望を受け入れようと覚悟する瞬間、ベッドサイドテーブルに置かれた城崎のスマホの画面が光った。 俺には見えてしまった。画面に映る文字が。 「城崎…!」 「なんですか…。」 「倉科さんにバレる経路って何?どこから?」 「………直接聞いてくるんじゃないですかね。あの人、人の心読むの上手いですから。綾人さんとか相手なら即バレします、多分。」 なんだって?! じゃあダメじゃん!! 俺にどんどん近づいてくる城崎に両手を突き出して拒否する。 「ダメ!!待って!!」 「どうして?綾人さんもノリ気だったじゃん。」 「見て!!これ見てから考えて!!」 「ん?」 城崎のスマホを突き出す。 画面には倉科さんからのメッセージ。 『ちなみに破ったら一ヶ月に延長な。』 城崎はそれを見て、一旦動きを止めた。 「俺、嘘つける自信ない!でも一ヶ月我慢できる気もしない!」 「………」 「一週間なら辛うじて我慢できる…と思う…。だから、城崎も我慢してくれないか…?」 「………」 「俺、一ヶ月も城崎と…、その…、ぇっち…できないとか…無理だから……。」 一ヶ月セックス禁止とか、もはや別居しなきゃ無理。 そんなの絶対嫌だ。 城崎と離れたくない…。 精一杯自分の気持ちを伝えると、城崎は俺を抱きしめて熱い息を吐いた。 「俺も無理。」 「城崎…」 「今すっっっごくシたいけど我慢する。本当は今すぐ綾人さんのことひん剥いて、外も中も全部愛し尽くしたいけど我慢する。」 「ん…。」 「その代わりキスさせて?触れられない分、いつもよりいっぱいキスさせてください。」 「俺もしたい…。んぅ…♡」 城崎は俺を押し倒して唇を奪った。 太腿に当たる城崎の股間は、布越しにでもわかるくらい硬くて熱くなっていた。 さっき抜いてきたはずなのに。 こんなに興奮してるのに、我慢してくれてるんだ。 「夏月…っ、好き…♡」 「ダメだよ、綾人さん。今日に限っては名前呼び禁止。俺、約束守れなくなっちゃうよ?」 「ダメ…っ、ぁ♡」 「いっぱいキスして、キスだけでイカせてあげます♡」 「んぁっ♡はっ♡城崎ぃ…♡」 言葉通りキスだけで。 俺は何度かイッてしまった。 射精した気怠さと、酔いもあってそのまま気付かぬうちに寝落ちしていた。

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