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第869話

小鳥の囀りと朝の日差しで目を覚ます。 城崎はもう起きているらしい。 ダイニングの方からいい香りが漂ってくる。 着替えてからリビングに向かおうと服を脱ぐと、肌が赤くなっていた。 昨日あれだけ日焼け止めをたっぷり塗ったのに、肌がヒリヒリする。 姿見を見つめていると、後方でドアが開いた。 「綾人さんっ、起きてくださ……」 「あ。おはよ、城崎。」 「ふ、服着てくださいっ!!」 城崎は裸の俺を見るなり、慌てて部屋を出ていった。 何度も見てるだろうに…と思うけど、きっと今見たら約束を守れなくなるからなんだと思う。 シャツを着てリビングに行くと、テーブルには目玉焼きとトースト、それにサラダとウインナーが用意されていた。 「綾人さん、おはよ…♡」 「ん。おはよう。」 チュゥッと唇を吸い合う。 やっぱり。服を着てたらいつも通りだ。 朝から幸せ…。 「朝ごはんありがとう。」 「どういたしまして♡というか、今日の仕事いります?俺は明日からのことで、心の準備とか色々したいのに…。」 「心の準備とかしなくていいよ。」 「よくそんなこと言えますね。綾人さんだって、俺の実家訪問するってなったら、俺が構えなくていいって言ってもラフな感じで来れないでしょ。」 「うっ…。それを言われると…。」 明日は城崎も一緒に、俺の実家に帰省する予定だ。 恋人の実家訪問とか、そりゃ緊張するか…。 俺にとってはただ実家に帰るだけなんだけど…。 「今日は仕事が手に付かないかもな〜…。」 「しっかりしてくれよ。」 「帰りに手土産買って帰りましょうね。」 「明日駅で買えばいいだろ。」 「百貨店でいいもの買いたいです。」 「じゃあ集中して定時に終わらせろよ?」 「うぅ〜……。綾人さんの意地悪……。」 誰が意地悪なものか。 百貨店とか寄るなら定時で終わらせなきゃじゃん。 俺は正論言っただけだし!! 「もう出るぞ。」 「えっ?!待って…!いってきますのチューは?!」 「知らん。」 「何で怒ってるんですか??」 「怒ってない…、んぅ…」 言い返そうと振り向いたら、唇を奪われた。 もう…。別に怒ってなかったのに…。 理不尽に意地悪って言われたから、ほんのちょっとムカついただけだし。 「ん…、城崎…」 「うん…。もう我慢する。あと一回だけ。」 「ん…」 最後にぺろりと唇を舐められる。 やらしー…。 めちゃくちゃエロいんですけど、この男。 「今日も仕事がんばろーっと♡」 「俺の分まで頑張って。」 「いっぱい契約取ってきます♡ご褒美くださいね?」 「飯な。」 「えーーーっ!?」 えっちなご褒美が欲しかったのか、城崎は残念そうに項垂れた。 城崎が契約取るなんて当たり前。 そんなのでいちいちエロい褒美をあげていたら、俺の体がもたない。 ぶーぶー文句垂れる城崎を置いて、家を後にした。

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