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第871話

「綾人さんっ!帰りましょ〜♡」 「ゲッ。マジで定時で終わったのかよ?ていうか、職場では名前呼びするなって言ってるだろ…。」 「だって〜…。うん、わかりました。ごめんなさい、先輩っ♡」 「本当に分かってんのか?」 定時ぴったりに俺の前に現れた城崎。 名前呼びやめても、こんなデレデレじゃ変わんねぇよ。 にしても、どうするか…。 仕事、もうちょっとだけ残ってるんだよな…。 先に百貨店行ってもらう方がいいか? 「なぁ、城崎。おまえ先に…」 「あとこれだけですか?俺も手伝います。」 「いや、百貨店閉まる前に行ってくれよ。」 「そんなすぐ閉まりません。明日は大事な日なんですよ?先輩と離れるなんてできる限り避けたいんです。」 「どういう理屈だよ。」 「願掛けみたいなもんです。」 理由はともあれ、城崎は手伝うことを勝手に決めたらしい。 まぁそんなに多くもないし、百貨店閉まるまでには帰れるか。 「ありがとな。」 「どういたしまして。………先輩、一つだけお願いが…。」 「何だよ?口篭って。」 「ちょっとこっち…」 グイグイと手を引かれ、導かれるままに着いていく。 到着したのは地下の隅にある人がほとんど出入りしないトイレ。 ここに来たってことは…。 「おいこら…。」 「だって……。今日も頑張ったからご褒美欲しいな〜?」 「ご褒美は飯だって……、んっ」 「ご飯だけじゃ足りない。先輩が欲しい…。」 「んっ!ちょ、城崎…!家帰ってからで…、っ♡」 「我慢できない。」 個室に閉じ込められて、壁に押さえつけられ唇を奪われる。 味わうように何度も重なり、時々舌を捻じ入れられる。 「んぅっ…ぁ、はっ…、城崎…っ♡」 「可愛い…。愛してるよ…。」 「ちょっ…んぁ…♡」 膝で股間をぐりぐり刺激され、否が応でも反応してしまう。 まだ仕事あんのに…! 「綾人……」 「こんの…、バカッ!!」 「痛っ!」 フーッフーッと荒い息を吐き、城崎を突き飛ばす。 このまま流されてちゃ、仕事終わんねぇ…。 キョトン…とした城崎を叱りつける。 「職場で何してんだっ!バカ!」 「………」 「俺の両親のために手土産持っていきたいつったの城崎じゃん!!百貨店閉まっても知らないからな!?」 「……ごめんなさい。」 「もう一人で帰れ!俺は仕事終わらせて帰るから。」 「やだっ!ごめんなさい…。もうしない。ごめんなさい…。」 あーもう…。 こんなことで喧嘩したくなかったのに…。 目を潤ませて謝罪を繰り返す城崎の頬にキスをする。 「悪い。言い過ぎた…。」 「ううん。職場で盛ってごめんなさい…。」 「すぐ終わらせて向かうから、先に良さそうなの選んでて?母さんは餡子が好きだから。和菓子系の方が喜ぶ。」 「……!!はい!」 城崎は気持ちを切り替えたのか、嬉しそうに返事した。 部署に戻り、鞄を持ってエレベーターに乗ろうとする城崎の手を掴み、近づいて耳打ちする。 「帰ったらたくさんキスして…。」 「………!!」 「じゃ。また後で。」 「あ、綾人さんっ!」 城崎は名残惜しそうだったが、エレベーターが閉まって下に行くのを見送ってから仕事に戻った。

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