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第873話
夕食は俺が作った。
城崎がたくさん仕事頑張ったご褒美だ。
「召し上がれ。」
「綾人さんの手料理久しぶり!いただきまーす♡」
城崎はそれはそれは美味しそうに、並べたもの全部綺麗に完食した。
ここまで笑顔で食べてくれると、作り甲斐がある。
「綾人さん、また作ってね?」
「まぁ、毎日城崎にさせるわけにもいかないもんな。」
「それは気にしないでください!好きでやってるので!でも時々、綾人さんに余裕がある時だけでいいから、こうやって綾人さんの手料理を食べたいです♡」
「うん、わかった。……そうだ、城崎。アイスあるんだけど食う?」
「食べます!」
前に買っておいた気がして冷凍庫を開けると、1個だけしかなかった。
あれ?そういえば俺が1個食べたんだっけ?
アイスとスプーンを持って、ソファに座る城崎のもとへ向かうと、城崎は俺の両手を見て首を傾げた。
「綾人さんの分は?」
「あー…、えっと……」
「あ!わかった!俺と分けっこですね?綾人さん、あーんしてくださいっ♡」
城崎は俺に向かって大きく口を開ける。
食べさせろってこと?
いや、恥ずかしいし!!
「違うって!俺は前一人で食っちゃったから…。これは城崎の分。」
「えー?一緒に食べた方が美味しくないですか?ほら、綾人さんもここ座って!」
「わっ!」
腕を引かれ、城崎の隣に座らされる。
城崎はスプーンでアイスを掬い、俺の口元へ持ってきた。
「あーん♡」
「恥ずかしいって…。」
「二人きりなんだしよくないですか?それに、食べさせてもらった方が美味しいし♡」
「ん…」
口を開けると、中に冷たいアイスが運ばれる。
うん、たしかに美味い。
「俺にもあーんしてください♡」
「仕方ねぇな…。」
二人で食べさせあっていたら、多少なりとも時間はかかるわけで。
最後の方にはアイスは箱の中で溶けていた。
でも溶けててもいいなって思えるくらい、一人で食べたアイスより二人で食べたアイスの方が美味いと思った。
「綾人さん、一緒にお風呂入りませんか?」
「えー…。」
「だって明日からご実家でしょ?さすがにご両親の前で二人で入るのは気が引けるっていうか…」
「実家で一緒に入るわけねぇだろ。」
「じゃあ今日一緒に入りましょうよー!」
一緒に入りたくないわけではなく、ただ恥ずかしいだけ。
結局城崎のおねだりで一緒に風呂に入った。
そしてまだ23時だけど、明日のためにベッドに入る。
「服着ろ。」
「えー。暑いもん。」
「暑いなら離れろ。」
「もー。照れ屋さんなんだからー。」
上裸の城崎に抱きしめられ、天邪鬼が発動する。
城崎は照れ隠しだと分かっているから、俺の言葉を聞き流して抱きしめているけど。
「明日楽しみですね。今日眠れるかな?」
「うん…。正直ちょっと怖いけど…。」
「大丈夫。絶対に認めてもらって、綾人さんの将来は俺がもらうんです♡」
「あっそ…。」
城崎の言葉が嬉しくて、口元が綻んだ。
俺はバレないように城崎の胸元に顔を埋め、眠ったふりをした。
無事、城崎が俺の両親に認められますように。
そう祈りながら、俺は目を閉じた。
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