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第879話

城崎は父さんや母さんに質問された内容を、大人な事情は伏せながらクリーンな内容に修正して話していた。 城崎の口からだと城崎の片思いに聞こえてくるから、合間合間で俺も城崎が好きだからって内容を挟むと、父さんも母さんも嬉しそうに笑っていた。 談話の前に本題を入れたとは思えないほど和やかな空気感。 よかった。本当に認めてくれたんだ…。 城崎の人当たりの良さがいいのも、認めてもらえた大きな要素の一つだと思う。 「それにしても、聞いていた通りの好青年だね。」 「え?」 「綾人が前に帰ってきた時に言っていたんだ。6つも年下だけど仕事ができて将来も有望。おまけに家事もできて優しくて格好いいって。」 「父さんっ?!」 「あ、綾人さんがそんなに褒めてくれてたんですかっ?!」 「そんなにいい条件揃ってるわけないだろうなって百合と話してたんだけどね。期待を超える相手を連れてきて、正直戸惑ってるよ。」 恥ずかしい……。 顔が熱くなって下を向いていると、城崎が俺の手を握る。 城崎が喜んでくれてるならいっか…。 「告白も城崎くんからだってね?」 「はい!僕が綾人さんに一目惚れして…。わかりやすくアピールしてたつもりだったんですけど、一年もかかってしまいました。」 「綾人は少し鈍いところがあるからね。」 「断られたりもしたんですけど、やっぱり諦めつかなくて…。付き合うのも、半ば無理矢理言わせたようなもので…」 は…? 何でそんな悲しそうな顔して嘘つくんだよ? 俺は…、俺は……! 「そんなことないから!」 「え…?」 「俺、城崎のことが好きで付き合ったから!同情とかじゃないし。城崎だから付き合ったんだぞ?!他の男とか無理だから!!」 「ちょ、綾人さん…っ?!」 城崎に掴み掛かると、バランスを崩して椅子ごとひっくり返った。 ドスンッと音がして、両親が慌てた顔で俺たちの周りにしゃがみ込む。 「大丈夫っ?!」 「…ってて。綾人さん、怪我してない?」 「あ…、悪い…。」 俺は全然痛くない。 城崎が守ってくれたから…。 城崎の後頭部にはぷくーっとたんこぶが出来ていて、俺は慌てて冷蔵庫にアイスノンを取りに向かった。 「ごめんっ、痛いよな?ごめんな、城崎…っ」 「綾人さん、分かってるからね?」 「え…?」 冷凍庫を漁っていると、城崎が俺の隣にしゃがんで小声でそう言った。 「あのとき綾人さんが俺のこと好きだから返事してくれたって、分かってるよ。でも俺が綾人さんを誑かした悪者だってことにしないと、こんな素敵なご両親見てたら、綾人さんのこと奪った俺が許せなくなりそうだったから…。」 「あのときの俺の気持ち、勝手になかったことにするなよ…。」 「うん…。ごめん。」 「あと、俺は城崎が悪者だって思われるなんて絶対嫌だ…。俺が城崎を選んだんだ。自分の大切な人を悪く言うのは、親であろうと許さないから…。」 城崎に抱きつくと、城崎も俺を安心させる様に抱きしめ返してくれた。 城崎は悪者になった方が気持ちが楽だったのかな…? でも、これからずっと付き合っていくのに、そんなマイナスイメージ持たれるのなんて、城崎だってしんどいに決まってる。 「綾人は城崎くんのことが大好きなんだな。」 「うん。」 「ははは。まさか照れ屋な綾人がこんなにもちゃんと好きだって言う相手を連れてくるなんてな。」 キッチンまで様子を見に来た父さんが、俺たちの様子を見てそう言った。

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