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第881話

「……ふふっ。ははは!そうかそうか。よかったなぁ、綾人。こんなにも素の自分を出せる相手ができて。」 父さんは嬉しそうに笑い、そのあと真剣な目で城崎を見た。 城崎は父さんの視線に気づき、向かい合うように椅子に座る。 「綾人は一人っ子だったから、昔はとても寂しがりやで甘えたな子だったんだ。大翔が来てから……、あぁ、悪い。大翔は百合の妹夫婦の息子でね。」 「お伺いしております。」 「そうか、そんなことまで…。大翔が来てからかな…。綾人は頼れるお兄ちゃんになってくれた。成長したと思う一方で、親としては、あんなに甘えただった綾人が突然変わったのが心配でもあったんだよ。」 「そうだったんですね。」 「この様子じゃ、君には素の自分を見せてるってことだね。安心したよ。」 「もう…。恥ずかしいから俺の話やめて…。」 城崎には昔の俺のことを知られ、両親には今の俺のことを知られ…。 穴があったら入りたい気分だ。 でもきっとこの流れは……。 「城崎くん。」 「はい。」 「綾人のこと、よろしくお願いします。」 「はい!お任せくださいっ!!」 よかった…。 城崎は大喜びで俺を抱きしめる。 俺もすごくすごく嬉しくて、両親の前だからって少し躊躇ってた気持ちは吹っ飛んで城崎と抱き合った。 「今日はご馳走にしましょうか。」 「寿司でも取るか?」 父さんも母さんも嬉しそうにしていて、ちゃんと向き合って良かったと心の底からそう思う。 城崎が顔を近づけてきて、思わず手のひらで押し返した。 「それはダメだろ!」 「え〜?」 「親の前でキスとかバカかよ?!二人とも男同士に免疫ないんだってば!!」 「あ。じゃあいいこと思いついた〜♡」 小声で痴話喧嘩していると、城崎は「はーい!」と手を挙げた。 「今日の晩御飯は俺が振る舞ってもよろしいでしょうか?」 「えっ、本当に?城崎くんの手料理食べてみたいわね。」 「綾人が褒めてたな、そういえば。」 「あー。でも綾人さんはせっかく帰省したし、お母様の料理が食べたいですよね…。」 話し合いの末、城崎と母さんが何品ずつかを作ることになった。 そして城崎の提案で、俺と城崎が近所のスーパーに買い出しに行くことになった。 「じゃあ行ってきます。16時には戻りますね。」 「そんなかかる?」 「だって初めて行くスーパーって迷うじゃないですか。」 でも16時まで1時間半もあるんだけど…。 まぁいっか。 「気をつけてね。くれぐれも事故んないようにね、綾人!」 「はいはい。」 玄関を出てガレージの車に乗り込む。 運転なんていつぶりだろう? まぁ田舎道だし、なんとかなるか…。 「綾人さん♡」 「んっ…、っ」 ブレーキやアクセルの位置を確認していたら、城崎に抱き寄せられてキスされる。 こんな所でダメなのに…。気持ちいい……。 「は…っ、ん…♡城崎…っ、ダメ…っ」 「なんで?二人きりになるために色々話進めたのに。」 「なっ…?!料理振る舞いたいって言ったのも、俺と二人になるための口実ってことかよ?!」 「振る舞いたい気持ちもなくはないですけど、綾人さんとキスするタイミングを作る目的が8割ですかね〜♡」 「ぁっ、んん…♡」 舌をジュッと吸われて、一緒に力も抜ける。 ちょっと遅めの時間を提示したの、絶対これが理由だろ…! 座席を倒されて城崎が俺に乗り掛かり、キスがさらに深くなる。 「ふっ…ぁ、あ…んン…♡」 「可愛い声…。もっと聞かせて?」 「ゃっ…だぁ…っ、やだ、城崎…っ」 「ん。愛してるよ、綾人さんっ♡」 「あっ…んンッ♡」 城崎の声とキスだけで、俺は呆気なくイッてしまった。

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