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第882話

「バカ。変態。スケベ。」 出る瞬間に、城崎がティッシュを先端にあてがった。 そのおかげで下着も車も汚さずに済んだけど……。 背徳感がすっごい…。 しかもこれ、父さんの車な?! 「まぁまぁ。綾人さんもキスしたかったでしょ?」 「キスは…、したかった…けど…」 「イキたくなかったの?でもキスでイクほど気持ちよくなっちゃったんだもんね?仕方ないですよ。」 「言うなバカ!!!」 城崎のこういうとこ本当嫌いっ! 俺のこと辱めてどうしたいんだよ…。 「綾人さんの涙目ってめちゃくちゃ可愛いんですよねぇ…。最高…。天使…。可愛い〜…。」 こいつ……。 もしかして俺を泣かせるために…。 「いだだだ!綾人さんっ、痛いっ!!」 「最低!!」 「ごめんなさいっ!」 思いっきり足を踏んづけてやった。 逃れようとして動いた城崎の脚は、長すぎるが故に別の場所にぶつけて二次被害が起こっていた。 狭い車内だと身長高いのは不利だな。 「あっつ……」 額や首筋、様々な箇所から汗が吹き出し、たらりと垂れる。 いくら影とはいえど、真夏の車内。 一瞬くらっとして城崎にもたれかかると、城崎は俺を抱き止めて首筋に顔を埋めた。 「綾人さんの汗の匂い…、興奮する……」 「っ?!」 「舐めていい?」 「ダメに決まってるだろっ!!」 押しのけようとしても物理的に距離が取れず、そのままぺろりと舌が這う。 「ひっ…ぅ…」 「感じてる?」 「…感じてないっ!」 体がビクついてるから全く説得力はないだろうけど、このまま調子に乗らせていいことはきっとない。 グイグイ押しのけて、なんとか城崎の腕の中から脱出する。 「素直じゃないんだから。」 「うるさいな!早く買い物行くぞ!!」 「まだまだ時間あるのに。せっかちだなぁ。」 「変に勘繰られたら面倒だろうが!」 「はーい。」 城崎はやっと諦めてくれたらしく、助手席に戻った。 身なりを整えて、車のエンジンをかける。 冷房が効き始めて、やっと車内の温度が下がった。 「あ〜…、涼しい……。」 「いっぱい汗かいちゃいましたね〜。」 「誰のせいで。」 「まぁまぁ。そんな怒らないでください♡」 「…っ!」 頬にチュッとキスされて、まだ懲りてないのかと怒りそうになったが、触れるだけのキスだけでそれ以上は何もしてこなかった。 俺だって城崎とイチャイチャしたいし…。 だけど実家だし、人目だって気になるし…。 俺がどれだけ我慢してるかも知らずに、ムカつく…。 「い"っ…?!!」 「仕返し。」 油断して外を見つめる城崎の股間を思いっきり握ってやったら、城崎はびっくりした顔で俺を振り返った。 かくいう俺も、城崎の股間が硬くなってることに驚いて言葉を失いかけたけど…。 「もっと嬉しい仕返ししてください!」 「やだね。」 「夜触ってくれます?」 「やだ。」 「そんなぁ…。」 うだうだ文句言う城崎を無視して、俺はスーパーに向かって車を走らせた。

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