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第889話

家に帰り、大翔は両親にこっぴどく叱られていた。 でも怒られるということは愛情の裏返し。 大翔もなんとなくそれを分かっているのか、言い返さずにちゃんと謝っていた。 「じゃあ俺風呂入ってくるから。」 「僕も!」 「大翔、城崎くんが来てるんだから少しは遠慮しなさい。」 「嫌だ。兄さんとお風呂入るのは僕の特権なんだもん。」 父さんの注意を無視して、大翔は一緒に脱衣所に入ってきた。 まぁ昔から一緒に入ってるし、俺は全然いいんだけど。 城崎、怒ってるだろうなぁ…。 タオルで下を隠しながら下着を脱ぐと、大翔は俺の腰に巻いたタオルを取った。 「ちょ、大翔…!!」 「に、兄さん…、これは……」 「……………」 最悪だ。 大翔は俺の鼠径周辺を見て愕然としている。 俺だってもし自分に兄がいて、その兄の陰毛がなかったら驚くよ……。 正月も隠し通したのに、なんで今……。 「あいつに強要されてるんですかっ?!何か弱みでも握られて…っ」 「違うから。そりゃ最初は抵抗あったけど…。強要されてるんじゃないよ。」 「あいつ爽やかそうな顔して変態だ…。兄さん、やっぱりあいつとは別れるべきです!!」 変態なのは否定しない。 けど、別れる気は毛頭ない。 「何大きい声出してるんです…か……。」 「し、城崎っ?!これは…っ!!」 大翔の大声が気になって様子を見にきたらしい城崎。 大翔の前で全裸で立ち尽くしている俺を見て、固まってしまった。 ヤバイヤバイヤバイ。どうしよう…。 「綾人さん…。」 「な、何…?」 「どういうことですか?」 こっっっっわ!!! 顔は笑ってるのに声が笑ってない。 怖い怖い怖い。 言い返せずに黙っていると、大翔が城崎に掴みかかった。 「兄さんと別れろ!この変態!!」 「は?あんまり調子乗ってっと、そろそろ痛い目見るぞ?」 「ひっ…!」 さっきまでキャンキャン吠えてた大翔が、城崎のあまりにも冷たい目つきに怯んだ。 腰にタオルを巻き直し、城崎に近づく。 「ちょっと落ち着けって。」 「大丈夫です。ご実家でするわけないじゃないですか。」 「………」 何をだよ。 つーか、マジで怖いって。 たかが兄弟に裸を見られただけじゃんか。 「怒ってる?」 「まぁ、それなりに。」 「ごめん。油断してた俺が悪いんだ。大翔のことは許してやって?」 「………だって、大翔くん。よかったね、優しいお兄さんに恵まれて。」 大翔は涙目でこくこく頷いて、脱衣所から出ていった。 俺も逃げたいよ…。 そう思いながらも、城崎をギュッと抱きしめる。 「ごめん。許して?」 「……それは狡いですよ。」 「許してほしい。」 「………わかりました。でも次は無いですからね?」 キスして仲直り。 風呂は一緒入ろうと誘ってみたけど、親にバレたら変な心配させそうだからと別々に入ることになった。

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