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第890話

風呂から上がって、髪も乾かして、歯も磨いて…。 俺の部屋で床に布団を敷いて、俺はベッド、城崎は布団に横になる。 仲直りはしたものの、さっきのあれから少し気まずい。 口数が明らかに減ったし、やっぱりまだ怒っているのだろうか? 「城崎……」 「…………」 「もう寝た…?」 「…………」 さっき横になったばかりだし、そんなすぐ寝ないと思うんだけど…。 話してくれないと寂しい…。 「……夏月…」 「…っ!」 「夏月…、寒い…。」 本当は寒くなんかない。 いくら田舎の夜といえど、真夏だから寧ろ暑いくらいなのに。 でもこう言えば城崎はきっと…。 「素直じゃないですね。」 「城崎…っ」 「もう名前で呼んでくれないの?」 「夏月…。夏月、ごめんな…。」 城崎はベッドに入ってきて、俺を優しく抱きしめてくれた。 目尻に溜まった涙を指で掬い、瞼にキスを落とす。 絵本に出てくる王子様みたいな仕草に、なんだか擽ったい気持ちになる。 「もう怒ってないです。不安にさせてごめんなさい。」 「本当…?お仕置きもしない…?」 「お仕置きは…したいですけど。嫌ならしない。」 口を尖らせる城崎を見て、愛おしくなる。 ぎゅーっと抱きしめ返して、唇を重ねる。 「お仕置き…してもいいよ?」 「…っ!」 「痛いだけなのは嫌だけど…。夏月の愛のこもったお仕置きだったら頑張る…。」 城崎は珍しく顔を真っ赤にして、俺を抱きしめて顔を隠した。 可愛い……。 「綾人さん…、可愛すぎ………///」 「照れてるのか?」 「照れますよ、そりゃ…。あーもう…。家帰って綾人さんのこと愛しまくりたい…。」 「へへ。楽しみにしてる♡」 鼻のてっぺんにキスすると、口にキスが返ってきた。 舌先を出すと、あっという間に絡め取られて、どんどん深いキスへと変わっていく。 「んっ…、んふ……、あっ♡♡」 「隣の部屋に大翔くんいるんだから、声我慢して。」 「んん…、ふ…ぅっ」 「上手。」 褒められて頭を撫でられるの好き…。 手のひらにすり寄ると、城崎も幸せそうに笑う。 「お仕置き何にしようかな〜?」 「痛いの以外だからな?!」 「痛いけど気持ちいいのは?」 「………頑張る。」 痛くて気持ちいいのってなんだろう? 城崎ならそんなエグいことはしてこないと思うけど…。 やっぱり玩具になるのかな。 できれば城崎に直接触れて欲しいけど、お仕置きで普通のセックスはないよなぁ。 「綾人さん、期待してる?」 「してない!」 「本当のこと言えばいいのに。」 考えてはいたけど、期待していたわけじゃない。 この、してやったりなニヤついた顔がなんかムカつく。 顔を隠すように城崎の胸に埋めて眠りについた。

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