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第891話
「綾人、城崎くん、そろそろ起きなさい。朝ごはんできてるわよ。」
「へ……?えっ?!あっ…」
母さんの声で目を覚ますと、俺は城崎に抱きしめられたまま眠っていた。
親に恋人と抱き合って眠ってるとこ見られるなんて…。
「本当仲良いのね。綾人が甘えるなんて。」
「ひ、引いてないの…?」
「どうして引くのよ?恋人と一緒に寝るなんて変なことじゃないでしょ。まぁ実家で遠慮なく一緒に寝るとは思わなかったけどね。」
「うっ…。なんかごめん…。」
「ふふ。早く降りてらっしゃいね。」
母さんは笑いながら部屋を出ていった。
肩を揺さぶって城崎を起こす。
「ん…。綾人……。」
「わっ?!」
また城崎の腕の中へ逆戻り。
トクン…トクン…と心地よいリズムで心臓が鳴る。
「…城崎っ、寝ぼけてるのか…?」
「綾人…、愛してるよ……」
「っ!起きろって!!」
このまま抱きしめられててもいいか…なんて思ってしまったけど、ここ実家なんだってば!
むにっと両頬を抓ると、城崎は唸りながら目を開けた。
「綾人さん……、おはよ……」
「ふっ…、ぅ〜……」
俺を視界に入れるなり、幸せそうに目を細めて俺を抱きしめてキスをする。
甘い。甘すぎる。
幸せすぎるんだけど、ここ実家なんだってば!!!
「城崎っ!!」
「なにぃ…?」
「朝ごはん!母さんが起こしにきたから!」
「へ…?あー……、そっか。そうだった…。ここ綾人さんのご実家でしたね…。」
城崎は右手で目を擦りながら、むくりとベッドから起きて大きく伸びをした。
こっちの気も知らずにスッキリした顔しやがって…。
居間に向かいながら城崎に文句を言う。
「朝から母さんに見られたんだからな。恥ずかしくて顔も合わせらんないよ。」
「お母様、なんて?」
「仲良いのねって。」
「まぁラブラブですからね〜。」
何も気にしてなさそうだな、こいつ…。
普通、親に見られたら恥ずかしいだろ。
自分の親じゃなかったら平気なものなのか?
「おはようございます。」
「あら。遅かったわね。大翔はもう食べ終わっちゃったわよ。」
居間に着くと、キッチンに母さんと食器を片付けている大翔がいた。
大翔は城崎を見て一瞬怯えた顔をしたけど、城崎が大翔の頭にぽんっと手を置く。
「あはは。残念。一緒に食べたかったな?」
「はぁ?!食べたくないし!!僕は勉強で忙しいから!!」
大翔はベェッと舌を出して悪態をつき、居間から出ていった。
なんか昨日までの大翔に戻ったな。
目玉焼きとトーストを頬張りながら、テレビに流れるニュースを見つめる。
「あなた達、今日はおばあちゃん家に行くんでしょ?」
「あー、うん。そのつもり。」
「楽しみにしてるみたいよ。ゆっくりしてきなさいね。」
今日は昔から大好きだった祖母に城崎を紹介する。
お正月に帰省した時も、男の恋人がいることは伝えたけど、やっと紹介できる。
「僕もおばあさまに会えるの楽しみです。」
「うふふ。おばあちゃんも喜ぶわ、きっと。……そうだ。今夜おばあちゃん家の近くでお祭りがあるのよ。せっかくだから顔出してみたら?小規模だけど花火も上がるしね。」
「そうなんですか?行きたいです、綾人さん!」
「はいはい。じゃあ母さん、晩御飯は屋台で何か食べてくるよ。」
「わかった。気をつけてね。」
母さんに見送られ、車で祖母の家に向かった。
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