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第895話

両手いっぱいの食べ物を消費して、次は遊び歩くことにした。 金魚すくいやヨーヨー釣り、なんと言っても城崎が得意なのは……。 「あれ取ります。」 「お兄さん、それは難しいよ〜。」 「いきます。」 射的。 一番的が小さい『温泉一泊二日券』を狙い、城崎が構える。 相当取られない自信があるのか、屋台のおじさんはケタケタ笑っている。 城崎は真剣に狙いを定め、引き金を引いた。 パァンッと弾が放たれた音とともに、狙っていた的が地面に落ちる。 「えっ……」 「やったー!綾人さん、やりました!温泉です!!」 「すげぇ…。」 おじさんも驚いて固まり、俺はキュンキュンして固まった。 城崎は嬉しそうにチケットを貰い、俺の手を握って移動する。 マジか…。一発で撃ち抜いた…。 格好良い…。やばい…。 一緒に俺の心臓も撃ち抜かれたのか、城崎に手を引かれるままボーッと歩いていた。 「綾人さん、温泉嬉しいですねっ♡露天も部屋に備え付けらしいです!500円でこんな豪華な部屋で泊まれるなんて最高ですね♡」 「あー…、え、うん…。」 「綾人さん、顔赤い…?暑いですか?大丈夫?」 ひぃ…。 格好良すぎるんだって!! グイッと顔を真逆に逸らすと、視線の先に見知った顔が…。 「望月…?うわっ、望月じゃん!久しぶり!」 「えっ、望月くん??うわ〜!懐かしい!東京行ったんじゃなかったっけ??」 やべ……。 近づいてきたのは中学の同級生だった。 「ひ、久々…。」 「相変わらずイケメンだなぁ〜。てか、そっちの人は?まさか芸能人??」 「わぁ〜、本当だ!超イケメンじゃん!!」 苦手な二人…というわけではないが、この状況で会いたい二人ではなかった。 二人とも当時はクラスの中心人物で、何よりも距離感が近い。 女の方は城崎のことジロジロ見て、なんならもう手が触れそうな…。 「綾人さんのご友人ですか?」 「そう!中学の時のクラスメイト!望月ってば、大学で上京したから全然クラス会とかも参加してくんないしさ〜。女子達が連れて来い連れて来いってうるさいのなんの。」 「へぇ。」 「なぁ望月〜。お前その様子じゃまだ結婚してねぇんだろ?いつなら空いてる?おまえと付き合いたいって奴、山ほどいると思うよ。」 「いや…、俺は……」 絡み方めんど…。 どう断ろうか言葉に迷っていると、城崎は俺の前に立った。 「すみません。綾人さんは将来を約束した相手がいるのでご辞退させていただきます。」 「へ?あ、そーなの?じゃあ君くる?」 「いや、俺も心に決めた相手がいるので。では。」 城崎は爽やかな笑顔でそう言い放ち、俺の手を引いて同級生の前から立ち去った。 将来を約束した相手って…。 城崎のこと…だよな…?/// 「ちょ…、手…!!」 「ムカつくから離しません。」 「俺何もしてねぇじゃん。」 「ダメ。ムカつく。綾人さんと付き合いたい人が山ほどいるクラス会なんて、絶対参加させません。」 「行かないよ。」 さっきまでご機嫌だったのが打って変わってしまい、どうやって城崎の機嫌を取り戻すか頭を抱えた。

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