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第898話

朝起きて、祖母の作った朝食を食べて、帰る支度をする。 「ばあちゃん、ありがとう。」 「こちらこそありがとう。久々に孫の顔も見れたし、孫の恋人も見れるなんて嬉しかったわぁ〜。城崎くんもありがとう。」 「いえ。美味しいご飯に、素敵な浴衣に、何から何までありがとうございました。お祖母様とたくさんお話できて楽しかったです。」 城崎が祖母の両手を握ると、祖母は頬を染めて俺を見た。 「色男って罪だねぇ。」 「ほんとにな。」 「え?……っ!お、お祖母様っ!僕には綾人さんという心に決めた人が…っ!!」 祖母の言葉の意味を理解したのか、城崎は慌てて祖母から手を離す。 俺の手を握ってくる城崎を見て、俺と祖母は目を合わせて吹き出した。 「冗談よ。綾人のこと、これからもよろしくね。」 「は…、はいっ!!」 「また来てね。」 「うん。じゃあね、ばあちゃん。元気でね。」 城崎と手を繋いで、祖母の家を後にする。 車に乗って実家に帰ると、玄関に入るや否や大翔が飛びついてきた。 「兄さんっ!遅い!!今日東京戻っちゃうのに、おばあちゃん家に泊まるなんて…!!」 「ごめんごめん。」 「やだー!!明日までいてください〜っ!!」 「明日は予定があって…。」 本当はないんだけど。 大翔には悪いけど、連休最後の一日くらい、城崎と二人きりでイチャイチャしたい。 「今度僕が会いに行ってもいいですか?」 「いいよ、おいで。」 「やったー!」 「ちょ、綾人さんっ?!」 勝手に約束してる俺を見て、城崎はショックそうな顔をする。 まぁ居座るわけじゃないんだし、別にいいだろ。 「来る時は事前に連絡してな。」 「はい!」 「いいだろ?城崎。」 「………はい。」 不服そうだけど一応頷いてくれた。 優しいからなぁ、城崎は。 「兄さん、少しいい?」 「うん?どうした?」 「ちょっと来てください…。」 大翔に連れられて部屋に入ると、大翔は部屋の外を確認する。 城崎を警戒してるのか? 廊下に誰もいないことを確認して、そっと一枚のルーズリーフを差し出してきた。 「これ……。兄さんの字じゃないよね…?」 「ん?」 「前の分からないって言ってた問題…。これ書いたの、あいつ…?」 ルーズリーフには城崎の綺麗な字で、一昨日大翔が俺に質問してきた問題が丁寧に分かりやすく解答されていた。 あいつ、いつの間に…。 「そうだな。これは城崎の字だよ。」 「………分かりやすかった。」 「ん。じゃあちゃんと本人にお礼言いな。」 大翔は顔を歪ませて嫌そうな顔をしたけど、俺と一緒に居間へついてきた。

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